研究組織
この領域は、これから数年で確実に成果が期待され、新たな素粒子像を探る上で極めて重要な実験と、その成果に直接結びつき、大きな飛躍が期待される理論研究で構成する。研究期間は、LHCの運転開始時期を考慮して6年とし、それぞれの分野を代表する最前線の研究者の集結を全国規模で計り、研究を強力に推進してゆく。
3つの研究項目を建て、これとは別に総括班を置く。それぞれの研究が成果を上げるだけでなく、ヒッグス粒子、超対称性などの発見を通して、領域全体が標準理論を超えた新しいパラダイムの構築と21世紀の新しい素粒子像を探る共通の目的を持つ必要がある。総括班は、この目的の為に、最新の研究成果の共有、相互の情報交換のみならず、研究の将来発展する方向を研究項目の枠を超えて議論し、領域全体の調整を行う。また、年1回程度の割合で、国内外の関係する研究者を招いて研究会を行い、研究の発展する方向を議論する。
- 研究項目A:ヒッグス粒子や超対称性粒子の発見やその詳細な研究、並びに標準理論の精密検証を通してその破れを探る研究を、アトラス検出器を用いて行う。
- 研究項目B:レプトンの世代混合μ→eγの発見を通して、超対称性による統一理論やニュートリノの質量の関わるシーソー機構を探る。
- 研究項目 C:アトラス、MEG 実験が切り拓いた新しいパラダイムを展開し、新しい素粒子物理学の方向性を研究する。超弦理論、超対称性を通しての力の統一や時空構造の解明、ゲージ原理や世代の意味するものを探る。これら先駆的な理論研究が示唆するものをA,Bの実験に於いて検証を行う。この様に実験と理論は不可欠な相補的な関係にある。
研究組織
領域代表者 駒宮幸男 東京大学・大学院理学系研究科・教授
事務担当者 浅井祥仁 東京大学・素粒子物理国際研究センター・助教授
総括班
研究項目A: エネルギーフロンティアLHC実験
- 計画研究 A01「アトラス検出器を用いたヒッグス粒子の発見」 (代表: 坂本 宏 他7名)
- 計画研究 A02「アトラス検出器を用いた超対称性の発見」 (代表: 川越 清以 他7名)
- 計画研究 A03「アトラス実験での精密測定と標準理論を超えた物理の研究」 (代表: 岩崎 博行 他12名)
- 計画研究 A04「素粒子模型構築へのLHC実験のインパクト」 (代表: 野尻 美保子 他2名)
研究項目B: レプトン世代混合で見通す超対称性から超高エネルギーの世界
- 計画研究 B01「ミュー粒子稀崩壊探索実験MEGで迫る超対称性大統一理論」 (代表: 森 俊則 他5名)
- 計画研究 B02「超対称理論における世代構造とレプトン・フレーバーの破れの研究」 (代表: 山口 昌弘 他2名)
研究項目C: 力の統一と超対称性の理論研究
- 計画研究 C01「超弦理論のコンパクト化に基づく標準模型へのアプローチ」 (代表: 江口 徹 他2名)
- 計画研究 C02「超対称ゲージ理論と精密測定の物理」(代表: 石川 健三 他2名)
- 計画研究 C03「時空構造と統一理論」(代表: 井上 研三 他1名)
- 計画研究 C04「超対称模型の現象論的研究」(代表: 岡田 安弘 他1名)
この内、A04,B02は実験に密接に結び付いた現象論的研究であり、アトラスやMEG実験に直接理論的な助言を行う。同時に、A04,B02,C04の現象論は、アトラス、MEG実験の成果を研究項目Cに繋ぐ上で重要な役割を果たし、逆にC01-03で得られた成果を実験に還元する。

本ページに関する問い合わせ先:東大素粒子センター・坂本 宏sakamoto@icepp.s.u-tokyo.ac.jp
2006年6月22日更新