────時空と宇宙の謎を解明する。
東京大学 素粒子物理国際研究センター

山下研究室

中性子寿命の精密測定

山下研では,J-PARCの中性子源を用いて中性子の崩壊寿命の精密測定を行う実験に取り組んでいます.

J-PARCの運転開始と中性子光学の発達

茨城県東海村で大強度陽子加速器(J-PARC)が2008年度に運転を開始しました。本研究室では、このJ-PARCの大強度パルス中性子供給ラインでは低エネルギー(0.1eV以下)中性子を用いて、標準模型の精密検証、新しい物理の探索を行っています。また我々は近年急速に発達した中性子光学を用いることで、低エネルギー中性子ビームの正確な制御を可能にし、中性子と物質の相互作用によるγ線バックグラウンドを大幅な低減を目指しています。そして、これら大強度パルス中性子源と中性子光学を組み合わせることで大統計、超低バックグラウンドの中性子実験が実現します。

中性子平均寿命のずれ

2003年、貯蔵超冷中性子のβ崩壊での平均寿命測定で世界平均から6.5σずれる値が報告されました[1]。中性子の平均寿命は標準ビッグバン宇宙論での初期宇宙の元素合成シナリオで重要なパラメータであるにも関わらず、これは中性子平均寿命測定の世界平均値の誤りを示唆する可能性があります。しかしながら、貯蔵超冷中性子実験は容器との相互作用などβ崩壊以外の効果の補正による不定性が大きいと考えられます。そこで我々は不定性の少ない精密な測定を行い、正しい寿命を決定する必要があると考えています。

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