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From alumni

大学院での学びを
企業で活かす

日本電信電話株式会社 (NTT R&D)
サービスエボリューション研究所 研究員

Maya Okawa

物理を学ぶなら素粒子がいい――。漠然と抱いていたこの思いが明確な希望へと変化したのは大学4年生のころです。「ATLAS実験の解析をやりたい」と思うようになり、世界最大の加速器LHCでの実験に携われることに大きな魅力を感じ、ICEPPに進学しました。

大学院では浅井祥仁先生のもと、ヒッグス粒子の性質測定に取り組みました。LHCでは、主に4つの過程でヒッグス粒子が生成されます。私はそのうち、「トップクォーク対生成(tt対生成)」と呼ばれるモードを探索し、そこから得られる粒子の性質を調べました。検出器で取得されたデータを使用して、統計予測と事象が適合しているかを解析する研究です。

2012年にヒッグス粒子が発見されたときは修士1年。LHCにおける研究の焦点が、ヒッグス粒子の探索から性質解明に移りゆく時期にATLAS実験に関わることができたのは、幸運なことだと感じています。修士1年と2年とで計2回、それぞれ約1ヶ月間CERNに滞在し、ATLAS日本グループのメンバーと一緒に解析に取り組んだことも大きな刺激になりました。

現在は、NTTサービスエボリューション研究所で、人や自動車の流れを予測する機械学習技術について研究しています。特に力を入れて取り組んでいるのが、データが得られるごとに随時学習しなおす「オンライン学習(逐次学習)」アルゴリズムの研究です。GPSで匿名の軌跡データを収集し、リアルタイムに人や交通の流れを予測する。この技術を実用化できれば、巨大イベントでの混雑箇所の事故の防止や、世界各国の都市で起きている交通渋滞問題の解決などにつながります。

機械学習技術の開発では、「分析・予測・制御」の3つのマイルストーンを設定しています。今は2つめの「予測」の段階ですが、いずれはその先の「制御」に移行し、混雑の少ない安心・安全な社会を実現したいと考えています。

進路選択では大いに迷いました。機械学習にも強い関心がありましたし、研究成果を実社会へ直接届けることにも魅力を感じ、事業会社での研究職の道に進みました。企業選択では「サイエンスと実用性の両方に軸足を置いた研究活動ができること」を重視しました。

大学から企業に移り、研究のテーマや社会との距離感は変わりましたが、研究のプロセスは共通するところが多いと感じています。仮説を立て、さまざまな技術を駆使して検証する。大学院で培った数理的素養と論理的思考力、ATLAS実験の解析で鍛えられたプログラミングスキルは、企業の研究者となった今も私の土台になっています。

プロフィール

2014年3月東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修士課程修了(浅井研究室)。同年4月日本電信電話株式会社(NTT R&D)入社、サービスエボリューション研究所で機械学習技術の研究に従事。修士(理学)。