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From alumni

物理的な視点はどこに行っても
大きな助けになるんです

東京エレクトロンテクノロジー
ソリューションズ株式会社
サイエンティスト

Chihiro Kozakai

東京エレクトロンに勤めて4年半になります。半導体製造装置の⼀種である成膜装置というものに関連する仕事をしています。半導体の性能を上げるために、今までにない新しい絶縁膜を作ろうと、さまざまなアプローチから探究しています。ICEPPでは素粒子で、こちらでは物性と、分野は違いますが実験寄りということではICEPPでしてきたことと似ているかもしれません。でも、化学的な要素も多いので、難しいことがたくさんあります。少し前までは別の部署でデータサイエンス的な仕事をしていたので、今はいろいろ勉強させていただく修行中の身というところでしょうか(笑)。とはいえ、ちゃんと物を触りながら作業するということが好きなので、今の職場はとても楽しいですね。

こちらに勤める前は、大型低温重力波望遠鏡KAGRAで学振の特別研究員として3年ほどノイズデータの解析をしていました。KAGRA自体は非常に感度のよい実験装置なので、いろいろなノイズを捉えてしまうんです。そのため、重力波とノイズをちゃんと区別できることが重要なのですね。このKAGRAでの任期が切れるころにやって来たのがコロナ禍でした。海外で研究したい気持ちもあったのですが、どうにも行けそうな状態ではなく、アカデミアに残るか、民間で新しいことに挑戦するのか悩んだ末に、AIに注目が集まる時代になってきたこともあり、ICEPPで学んだデータサイエンスが生かせる仕事をしようと、こちらに応募して採用していただいたというわけです。

この職場には、仕事と並行して現役で天文学を研究している方がいたり、私のように素粒⼦分野から来た⼈、金融や食品が専門の人とか、ほんとうにいろいろな分野の出身の方がいるんです。アカデミアの人たちとは別のタイプの人たちにも出会うことができ、イノベーションを起こすためには、こういう多様性に溢れた環境こそが求められているのではないかと思っています。私が学んできた物理は、基本法則に⽴ち返って現象を捉えるという重要な気づきを与えてくれるのですが、この職場に限らず、物理的な視点はどこでも⼤きな助けになると感じますね。それにしても、痛感するのは周囲の方のレベルがとても高いなあということです(笑)。私ももっともっとレベルアップしていかなきゃと日々思っています。そういう意味では、とてもよい環境で仕事をさせていただいているなと。

ICEPPを選んだのは、森羅万象の根幹に素粒子物理学的なものがあるという、ちょっとロマン的なところが好きだったからだと思います。たとえば、ヒッグス粒子の理論などを知れば、「ああ、ここにあるものの重さというのは、ヒッグス粒子によってできてるんだ」みたいに、素粒子を学ぶと世界観が変わるんですね。そういうところが、とても魅力的なんです。

ICEPPではスイスのCERN(欧州合同原子核研究機構)に派遣されて、ATLAS実験の解析に携わり、未知の超対称性粒子の探索をしていました。その経験から、実際に“何かが起きている現場”にちゃんと行くことの大事さを知りましたね。海外の“現場”に行かせてもらい、そこでさまざまな国から来た研究者の方々と実際に話をしながら研究を進めていく、そんな経験はICEPPならではだと思うんです。そこで培われたマインドが、今の職場でも活きているなって思いますね。

これを読んでくださっている学生のみなさんに伝えたいのは、進路をもう決めているにしても、まだ迷っているにしても、自分が大事だと感じていることはちゃんと大事にしたほうがいいということです。そのためにも、自分が大事だと感じることってなんだろうと、じっくりしっかり考えることが一番ですね。ICEPPに入ってよかったことですか? 私の場合、同期というすごい仲良しの仲間ができたことが一番よかったなあと今は思いますね。

プロフィール

2014年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻(駒宮研究室)修士課程修了。18年同博士課程修了、博士(理学)。日本学術振興会特別研究員(所属は高エネルギー加速器研究機構および国立天文台)を経て、2021年より東京エレクトロン株式会社に勤務。