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From alumni

正直なところ、ICEPPは
世界トップレベルに
一番いいところだと思います

ペンシルベニア大学
物理学・天文学部・ポスドク

Kaito Sugizaki

ICEPPで博士課程を修了した後、2024年10月からはペンシルベニア大学の物理学・天文学部でポスドクとして働いています。主に研究しているのは“異常検知トリガー”というもので、ICEPP時代にずっと関わってきたCERN(欧州合同原子核研究機構)のATLAS実験に引き続き携わっています。LHC(大型ハドロン衝突型加速器)で陽子同士を衝突させて得られるデータ量はとても膨大で、“トリガー”というシステムを使って、興味深い物理に関係しそうな衝突事象だけを選別します。でも、そのトリガーの設計の前提となる理論の“模型”が正しくないと、新物理に関係する重要な事象がデータとして保存されない可能性があります。そこで“模型”を仮定せず、他の衝突事象とは異なる“異常な事象”を見つけ出して残そう、というのが異常検知トリガーの設計思想です。発展途上の分野で新たな発見が多く、日々充実した研究生活を送っています。

物理に最初に興味を持ったのは中学生の頃で、宇宙がどうやって始まったのか、なぜ我々はここにいるのか、などの素朴な疑問を持ったのがきっかけでした。高校2年の時には、宇宙の起源を知るには素粒子が大事だと知って、大学では素粒子物理を勉強することを志しました。慶應義塾大学に入り、卒業研究では超対称性に興味を持ち、その自発的破れをテーマに選びました。卒業後のことを考えたときに、そのまま突き進んで研究職につくことが自分にできるのかどうかがわからず不安でしたが、ICEPPに合格し、研究にのめり込んでいくうちに、「僕も研究職でいけるかもしれないぞ」と徐々に勇気が湧いていきました。

ATLAS実験の研究は修士になってすぐに始まり、とてもワクワクしました。1年の夏に初めてCERNに派遣された時は無我夢中で、一瞬ですべてが過ぎ去っていったという感じでした。2020年2月にも3週間ほどもCERNに行ったのですが、ちょうどそのころにヨーロッパでCOVID-19のパンデミックが起こってしまいました。なんとか滑り込みセーフでギリギリ帰国できたのですが、それから1年半ほどはCERNに行くことができない状態になってしまいました。

そのような状況下でもLHC第3期運転の準備を進めるべく、日本のATLASグループはつくばのKEK(高エネルギー加速器研究機構)に集まり、そこからATLAS実験の試運転にリモートで参加するということを続けました。トラブルが発生しても、現地スタッフからの情報やオンラインで見られる情報だけを頼りに自分で判断して対応する必要があり、時には苦戦しましたが、問題解決能力はとても鍛えられたと思います。

COVID-19が終息した後、またCERNに長期間滞在して研究ができるようになりました。現地で世界中の研究者と協力してLHCの第3期運転を成功させることができ、素粒子実験分野の発展に自ら貢献していることが実感できるようになりました。だんだん「ここが僕の仕事場だ」という愛着が増していきました。

頑張った甲斐もあって、ATLAS Thesis Award(博士論文賞)を2025年1月に受賞しました。未知の超対称性粒子で、暗黒物質の候補でもあるヒグシーノの探索についての論文です。ペンシルべニア大学の先生方にお願いして、CERNの授賞式に参加させていただきました。自分の研究の重要性が認められた気がして、とても嬉しかったです。

正直なところ、ICEPPは世界でトップレベルに一番いいところだと思います(笑)。こんなに大勢の学生がCERNに行っているところは、アメリカにもなかなかありません。現地に行って研究するという、とても貴重な体験をさせてもらったと本当に感謝しています。僕の夢ですか?大袈裟になっちゃいますけど、やっぱり超対称性の発見に立ち会うことです。

プロフィール

2021年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻(奥村研究室)修士課程修了。2024年同博士課程修了、博士(理学)。2024年10月より現職。