これまでに行った主な研究と今後の研究活動

                 (小林富雄)



一貫して世界最高エネルギーの加速器を用いた素粒子物理の研究を行い、
国際共同実験を推進してきた。

 
e+e-衝突実験JADE (1977-1984)

    ハンブルグのDESY研究所のe+e- collder PETRA(20〜40 GeV)を用いた
    国際共同実験JADEで、
      ・ EM calorimeter(鉛ガラスシャワーカウンター約3000本からなる)の製作
      ・ QCDの研究(gluonの発見、結合定数の測定、他)
      ・ top quarkの探索
      ・ SUSY粒子(scalar electron, photino)の探索
    などを行った。


 
e+e-衝突実験OPAL (1980-現在)

    ジュネーブのCERN研究所のe+e- collder LEP(100〜200 GeV)を用いた
    国際共同実験OPALで、
       ・ EM calorimeter(鉛ガラスシャワーカウンター約1万本からなる)の製作
       ・ 素粒子の世代数の決定
       ・ 標準理論の詳細研究
       ・ top quarkの質量の算定
       ・ 力の大統一の実験的兆候の研究
       ・ Higgs粒子の探索
       ・ SUSY粒子の探索
    などを行った。


 
pp衝突実験ATLASの準備研究 (1990-現在)

    ジュネーブのCERN研究所で現在建設中のpp collder LHC(14 TeV)を用いた
    国際共同実験ATLASの測定器の開発研究、建設およびデータ解析の準備研究等
    を行っている。
       ・ 前後方ミューオントリガー用検出器としてThin Gap Chamberの提案、開発研究、建設
       ・ LHC実験データ解析システムの構築のための開発研究
       ・ LHC実験での物理study

    2008年夏には測定器は完成し、9月10日にはLHCもビーム周回に成功したが、その後
    加速器マグネットに故障が生じ、現在修理中。実験再開は2009年秋の見通し。



今後はATLAS実験の運転と物理解析を研究の中心に据え、前人未踏のTeV
エネルギー領域における素粒子物理の研究を行う。来年以降2〜3年のうちに


    ・ Higgs粒子の探索
       (LEP実験からは約200 GeV以下の質量を持つことが導かれ、また理論からも
        数100 GeV以下であるとされるHiggs粒子は、LHC実験での発見が確実視
        されている。)

    ・ SUSY粒子の探索
       (LEP実験での相互作用の結合定数のの精密測定の結果、力の大統一のため
        にはTeV領域での超対称性の存在が有望となり、LHC実験でSUSYが発見される
        可能性が高い。)

    ・ 余次元がもたらす新現象
       (super-string理論等で予言されるextra-dimensionの効果がTeV領域で見える
        可能性もあり、gravitonの励起状態やmini black holeがLHC実験で生成される
        可能性もないとは言えない。)


などの成果が期待される。この他、LHCでは、top quarkの詳細研究、
b-quark decayのCP-violation測定、dynamical symmetry breaking
による新現象、などなど、多彩な物理研究を行うことができる。


ATLASは約2000人の研究者が参加する巨大な国際共同実験だが、
数人で行うことができ、かつ狙いを秘めた
小規模の実験も、併せて
行っている。詳細はこちら



最近の講演など:

  ・"What Will LHC Bring Us: Higgs, SUSY, ---, or Suprises?"
         (18.Feb.2004, COE21/Quests@東京大学)

  ・"アトラス検出器全体像" (21.May.2005, LHC物理解析研究会@東京大学)

  ・"LHC Status" (25.Nov.2005, 1-st Int. Conf. "Discoveries of Higgs and SUSY
              to Pioneer Particle Physics in the 21st Century"@東京大学)

  ・"Comminssioning and Outlook of LHC" (2.Nov.2006, Joint Meeting of Pacific
         Region Particle Physics Communities:DPF2006+JPS2006…, @Hawaii)

  ・"LHC計画の予定と物理成果の時期予測" (16.Nov.2006, 特定領域科研費「ヒッグスと
         超対称性」総括班会議@東京大学)

  ・"Status and Outlook of LHC" (15.May.2007, PPC2007@TAMU, Texas)

  ・記者会見(10.Mar.2008, 東京大学):
     LHCでの発見へ向け世界最大コンピューティンググリッドが始動
        - アトラス測定器データを東大でも解析に成功 -

            プレスリリース資料記者会見資料

  ・"LHCで期待される物理成果" (25.Sep.2008, 先端加速器科学シンポジウム
         @学術総合センター)

  ・"LHCにおけるヒッグス粒子探索" (27.Mar.2009, 日本物理学会@立教大学)

  ・"LHC Status and Prospect" (2.Dec.2009, ILC Detector Workshop, KEK)

  ・"LHC実験が切り拓くテラスケールの世界" (11.Feb.2010, 公開講演会, 東大安田講堂)

  ・"LHC最初の二年" (18.May.2011, 高エネルギー春の学校, ラフォーレ琵琶湖)


1995年 欧州物理学会特別賞受賞 (JADE実験、グルーオン存在の確立)
2012年 科学技術政策研究所のナイスステップな研究者に選定
       (ヒッグス粒子の存在確認に貢献)
2013年 折戸周治賞受賞 (LHCによるTeV領域物理実験の開拓)
2013年 EPS High Energy and Particle Physics Prize
       (ATLAS実験、ヒッグス粒子の発見)
2013年 仁科記念賞 (ヒッグス粒子発見に対する貢献)


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