はじめに

私たちの研究室は、2025年4月から本格的に始動した新しい研究室です。
高エネルギー物理学は、2013年にヒッグス粒子を発見したスイス・CERNのLHC加速器に代表される高エネルギーコライダー実験と、それを保管する様々な中小実験の組み合わせで、暗黒物質・宇宙の物質生成の謎など宇宙の根本課題に関連した新しい物理(素粒子標準模型を越える物理: BSM)を探すことが最大の目標とした実験的研究を行う分野です。私たちは、LHCの次の計画となるILC(国際リニアコライダー)等のヒッグスファクトリーの実現を目指した将来コライダーのための物理・測定器研究や、その測定器技術を活かしてつくば市の高エネルギー加速器研究機構の加速器を用いて行うビームダンプによるアクシオン様粒子(ALP)探索実験(EBES実験)を推進しています。また、これらの実験で活かすための深層学習の研究を東大ICEPPの他の研究室や国内外の協力機関と連携して進めています。ヒッグスファクトリーは世界中の研究者が協力して実現するプロジェクトで、私たちはフランス・ドイツ・中国等の研究者と力を合わせ、国際共同研究に取り組んでいます。世界の研究者と協力して大プロジェクトを成功させ、宇宙の謎に迫る意欲のある方、ぜひ私たちと一緒に研究しましょう!興味のある方は、詳しく説明しますので、お気軽にご連絡ください。

研究テーマ

詳細な記述は準備中です。末原の個人ページもご参照ください。

メインとなる研究

ヒッグスファクトリー
ヒッグスファクトリーは巨大な加速器と超精密な測定器を用いた電子陽電子衝突器で、現行のLHC実験の10倍におよぶ感度でヒッグス粒子の精密測定を行い、宇宙の謎に迫る次世代大型計画です。中でもILC(国際リニアコライダー)は20kmの直線型加速器を用いたコライダーで、国際協力での日本への建設を目指しています。私たちの研究室では、世界の研究者と協力して物理解析・測定器開発に取り組み、ヒッグスファクトリーの早期実現(2040年頃実験開始)を目指しています。
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未知粒子探索
高輝度ビームを用いたビームダンプ実験(EBES)による未知粒子(Axion-like-particle: ALP)を推進しています。この実験は、KEK(つくば市)の大強度電子・陽電子線形加速器を活かして、10人程度ですすめる小規模な実験でありながら、世界の100人規模の実験を部分的に上回る感度でALP探索を行うことができます。 大規模実験と違って自分が実験の多くの部分をコントロールでき、自分の手で未知の粒子を探索することが本実験の魅力です。
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上記に加え、MEG実験および将来計画(PIONEER実験)、J-PARC muon g-2/EDM実験にも研究室メンバーが参加しています。

メインの研究のための技術開発

深層学習
チャットGPTに代表される深層学習技術が近年めざましい進化をとげ、世界を大変革する時代になっています。我々はGPTの基本技術であるTransformerやグラフニューラルネットワーク等の 最新の深層学習を用いて、測定器のデータから物理事象をより高精度に再現する手法の開発を行っています。次世代測定器は従来の測定器を遙かに上回る多数の測定器要素を備え、 その情報を最大限に利用する深層学習の研究は最優先事項となっています。
カロリメータ開発
カロリメータは素粒子実験の測定器の1要素で、粒子の全エネルギーを測定する技術です。通常のカロリメータと異なり、ヒッグスファクトリーのカロリメータは3次元に再分割された検出器を組み合わせたイメージングカロリメータとなっており、ヒッグスの測定や新物理探索に重要なハドロン等の粒子束であるジェットの高精度測定に特化した新しい技術です。 私たちの研究室では、シリコンパッドセンサーを用いたカロリメータや、シンチレータとチェレンコフ検出器を組み合わせた二重読み出し技術を活用した微細分割カロリメータの開発を進めています。