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石野研究室 青木匠氏がTopical Workshop on Electronics Particle Physics(TWEPP)Oral Awardを受賞

TWEPPは素粒子物理学および宇宙物理学実験で物理成果の鍵を握る“エレクトロニクス”をトピックスにした年1回の定期的なワークショップで、LHC、高輝度LHC、ニュートリノ研究施設、その他の加速器プロジェクトにおける電子システム運用の知識・経験や電子機器のR&Dにフォーカスしています。新型コロナウイルスの影響で、これまで多くの国際会議はオンライン形式が主流でしたが、今年より対面形式が徐々に復活し、TWEPP22は9月19~23日にノルウェー・ベルゲンにて開催されました。
本ワークショップに参加した石野研究室博士課程1年の青木匠氏は、修士課程より取り組んできたTGC検出器のトリガー機構などに関係するエレクトロニクスの刷新を題材に研究成果を発表し、高い独創性と他の実験への貢献が期待できる優位性が大いに評価され、Oral Awardを受賞しました。

発表時の写真
高輝度LHCに向けてTGCフロントエンドエレクトロニクスシステム開発のテストシステムをKEKで立ち上げ、初の統合試験を行なった時の様子(前列左側が本人、2020年10月撮影)。今回の成果発表に至る重要なマイルストーンとなりました。

研究課題

Complete design of maximally-automated self-driven control mechanism for a large scale electronics system and its implementation to the ATLAS Phase-II TGC system Presentation materials

受賞対象の研究について

大規模素粒子実験では通常、数千台以上のフロントエンド回路から構成される大規模なエレクトロニクスシステムを用いてデータ処理を行なっており、この大規模システムを正しく、また効率的に制御することはシステム設計において重要となります。本研究では、それぞれのフロントエンド回路上に搭載されている不揮発性メモリ内に設定パラメータを保存するという新しい発想を元にフロントエンド回路が自らを制御する自律型制御機構を開発し、高輝度LHC-ATLAS実験のThin Gap Chamber(TGC)検出器のシステムに実装しました。
本研究における発想・知識が、他の大規模素粒子実験などで広く応用可能であるという点が評価されたのだと自負しています。

TWEPP22集合写真
欧州やアメリカを中心に、素粒子物理学と宇宙物理学の実験プロジェクトに携わる研究者246名が参加。

感想と今後の抱負

まず、このような発表の機会を与えてくださった石野教授と奥村准教授に感謝します。またTGC検出器に携わるATLAS-JAPANメンバーからの多くのアドバイス・意見を頂いたことによって研究を進めることができました。今回の発表に協力してくださった皆様に心から感謝を申し上げます。
学会中は自分と近い研究をしている研究者・学生と交流を行うことができ非常に良い刺激となりました。今後もTGC検出器制御システムの研究・開発を続けると共にATLAS実験の取得データを使用した物理解析を進めていこうと思います。

リンク

Topical Workshop on Electronics Particle Physics(TWEPP)2022 (関連サイト)