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大学院教育 “知のプロフェッショナル”の育成

東京大学大学院理学系研究科では、次代を担う学究の徒に理学の理念と方法論を教授し、未知の問題に対する解決の知恵と手段を備えた独創性豊かな国際的人材を養成するため、毎年、修士課程と博士課程の大学院生を募集しています。
本センターでは、教授・准教授が物理学専攻の研究室を担当し、大学院生を受け入れています。研究室の学生は海外の実験に参加し、各国の研究者と切磋琢磨して実践的な競争力を鍛えあげています。素粒子物理・高エネルギー物理、宇宙物理で人類未踏の領域を拓きたい君たちの、果敢な挑戦を応援します。

研究室紹介

浅井祥仁教授(理学系研究科)/ATLAS実験・Tabletop実験

CERNのLHCでは、2015-18年に第2期運転が行なわれました。ATLAS実験で、2018年に過去最高の積分ルミノシティを記録したのは想像以上の成果です。2022年には第3期実験が、2027年の高輝度LHCが計画され、ハード・ソフトの両面で準備が進んでいます。ATLASコラボレーションでは、2015年に共同代表者に就任しました。日本陣営がヒッグス粒子発見に継ぐ貢献を果たせるよう、国際的な激しい競争の中で研究をリードしていきます。
LHCの実験データは今後10年で飛躍的に増大し、現在の100倍の計算機資源が必要になります。新しい計算機モデルを確立するため、機械学習や量子コンピュータを素粒子研究に応用することにも力を入れています。
また、国内では光と真空をテーマに独創的かつ斬新なアイデアで素粒子実験に取り組んでいます。それが、Tabletop実験です。徹底した技術開発により、加速器では到達不能な高いエネルギー領域の物理を間接的に検証し、未解明の宇宙誕生の謎に迫ります。

研究室ウェブサイト

写真 浅井祥仁教授

森俊則教授/MEG実験・ILC計画

宇宙初期に実現していたと考えられる素粒子と力の大統一(超対称大統一理論)を検証するため、PSI(ポールシェラー研究所)を研究拠点に国際共同実験MEGを推進し、標準理論では起こりえないμ粒子の崩壊を探索しています。MEG実験は、大統一理論やニュートリノのシーソー理論など、超高エネルギーの物理から期待される崩壊分岐比に到達可能な唯一の実験として世界的な注目を集めています。国際共同研究グループ全体を統括する実験代表者/スポークスパーソンとして、MEG実験の物理研究を主導するのが私の役割です。現在、MEG実験を発展させたMEG II実験を準備しており、実験感度を10倍上げて新しい物理の兆候を得ることを目指しています。
また、ICFA(国際将来加速器委員会)日本代表とJAHEP(高エネルギー委員会)委員長に就き、10年以上先を視野に入れ、エネルギーフロンティアの世界的な次期基幹計画の検討・策定にも取り組んでいます。ILC計画も各国際委員会で検討を進め、日本での実現に尽力しています。

研究室ウェブサイト

写真 森俊則教授

石野雅也教授/ATLAS実験

世界最高エネルギーの粒子加速器LHCを使って人工的に再現した宇宙初期の様子を観察しています。その成果として、新たな物理法則や新粒子を発見することを追い求めています。新発見には、「世界最高の実験装置」「優れたアイデア」「幸運」の3点セットが必要です。
LHCを使うことで1つ目の条件は自動的にクリア、しかも、圧倒的な世界一。
検出器の信号を高速処理する最先端エレクトロニクスの応用研究を通じて、新しい物理を捉えるためのアイデアを実現し、継続的に改良を重ねながら実験データを集めることで、2つ目の条件をクリアしようとしています。
そして、この最高の研究環境に世界最優秀の若者が集い、議論・競争・協力しながら一緒に新しいことを知ろうとしています。日々のクリエイティブな雰囲気は最高です。3つ目の条件、「幸運」はきっとこんなところに訪れると信じています。一緒にLHC実験をやりましょう!

研究室紹介

写真 石野雅也教授

田中純一教授/ATLAS実験

ATLAS実験に参加し、新物理を探索しています。研究テーマは大きく3つです。まずデータ解析です。標準理論を超えた物理の直接的な手掛かりを求め、2つ目のヒッグス粒子や超対称性粒子の探索など、新しいアイデアで取り組んでいます。
検出器のアップグレードに向けた研究開発も大きなテーマです。現在、液体アルゴン電磁カロリメータのトリガー読み出しのコミッショニング、エネルギー計算のためのFPGAファームウェア開発などを行なっています。2022年以降は新しいテーマにも挑みます。
コンピュータ科学も、物理解析で重要なテーマです。2027年度からの高輝度LHCや将来的の大規模実験では、解析データ量が膨大に増えます。そうした事態に備え、人工知能や量子コンピューティング、クラウドコンピューティングなど、最先端のコンピューティング技術の研究開発も進めています。柔軟な発想による新しいアイデアが必要な研究分野です。

研究室ウェブサイト

写真 田中純一教授
写真 山下了特任教授

山下了特任教授/ILC計画

ILCは、次世代のエネルギーフロンティアを担う加速器実験計画の最有力候補です。私もプロジェクトを率いる中心的役割を担い、欧・米・アジアの国際協力のもと計画を進めています。現在、研究開発とともに国際的な組織間で合意形成を進めており、計画の根幹を決める重要なフェーズにきています。日本の北上山地が有力候補として挙がっており、日本誘致にも力を入れています。
また、昨年、JAHEPの下に設立したILC推進パネルの委員長に就き、コミュニティを主導しています。
研究面では、ILD測定器の開発に参加し、ターゲットとなる物理現象のシミュレーションや測定性能評価を牽引しています。また、国内の大強度陽子加速器施設であるJ-PARCにて、世界最高強度での超低エネルギー中性子を用いた素粒子実験も行なっています。学外で出張授業を開催し、素粒子物理学への社会の関心と理解を高める活動にも数多く取り組んでいます。

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大谷航准教授/MEG実験・ILC計画

私の研究室では、宇宙の成り立ちを支配する究極の基本法則を、粒子加速器を用いた素粒子物理の実験的手法により解明することを目指しています。活発な研究活動を行ないつつ、測定器開発から物理データ解析まで幅広くこなせる実験物理研究者の育成にも力を入れています。
研究分野は大きく次の2つです。ひとつが、超対称大統一理論をはじめ、新物理の決定的証拠となるμ→eγ崩壊事象を世界最高感度で探索するMEG実験、もうひとつが、世界の素粒子物理学の次世代基幹プロジェクトとされる国際リニアコライダー(ILC)計画です。
MEG実験では物理解析責任者として実験を牽引し、先行実験を30倍上回る感度で探索しました。現在は、究極感度でのアップグレード実験MEG IIに向けて測定器の開発・建設を主導しています。ついに始まるMEG II実験に新物理発見の期待が世界中から寄せられています。
ILC計画では、新しいコンセプトに基づいた測定器ILD用の高精細カロリメータの開発を中心に、実験の実現に向けて精力的に進めています。

研究室ウェブサイト

写真 大谷航准教授
写真 奥村恭幸准教授

奥村恭幸准教授/ATLAS実験

全く新しい自然法則の証拠を素粒子実験データから見つけるべく、ATLAS実験に参加し、国際協力・国際競争の中で研究を展開しています。
実験データを用い、素粒子の相互作用に関する考察から、時空構造・真空構造・対称性を切り口に新しい自然観の確立を目指します。データ解析に加え、実験装置の運転・開発も実験の専門家として必要不可欠な技能です。現行システムの大規模装置の運用と、将来の実験基盤技術の開拓を、同時に最前線で進める層が厚くかつ機動的なチームで研究を進めています。最先端の装置開発、実験データ収集から物理データ解析までを通じ、総合的な研究力を持つ人材の育成を目指します。
研究は日進月歩。日々生じる問題と向き合い、実験チームで知恵を絞ってアイデアを出し、限られた時間内に解決する。小さくとも確実な一歩を、スピード感を持って進めていく。そんな研究をCERNの実験現場で目一杯楽しみましょう。

研究室ウェブサイト

澤田龍准教授/ATLAS実験

CERNのATLAS実験で、新粒子、特に超対称性理論から予想される暗黒物質候補の発見を目指しています。また、ATLAS地域解析センター計算機システムの運用に加え、高輝度LHCへ向けた計算機利用能力向上の研究も行なっています。
新粒子探索では、新粒子の寿命が長くなるようなモデルに着目しています。また、機械学習や量子コンピュータを素粒子物理学に応用することに力を入れています。機械学習を用いたソフトウェアによるトリガーを開発し、新粒子の探索能力を向上させることを狙っています。さらに、素粒子研究に応用できる量子アルゴリズムの研究と、それを実際に量子コンピュータで実行するための計算技術開発も行なっています。
こうした革新的な研究を進めるには、創意工夫と最新のデータ解析手法の融合が欠かせません。最先端のコンピューティング技術を習得・応用し、新物理を発見する意欲のある方の挑戦を応援します。

研究室ウェブサイト

写真 澤田龍准教授
写真 寺師弘二准教授

寺師弘二准教授/ATLAS実験

ATLAS実験に参加し、超対称性粒子や余剰次元の探索など物理解析を主導してきました。2027年に開始される高輝度LHC(HL-LHC)では、現在のデータ量の数十倍に匹敵するデータを取得することで予想もしていない大発見が起こるかもしれません。その発見を確実にするには、新しいコンピューティングパラダイムが必要です。
そのために、量子コンピュータを応用した量子機械学習や量子シミュレーションの研究に取り組んでいます。また、量子センシングによる精密測定によって、電弱スケールを超えるエネルギー領域を探索することも視野に入れています。量子コンピュータの基礎科学への応用と社会実装の実現を目指します。
量子コンピュータを含む量子情報処理技術の進展は目覚ましいですが、私たちはこの技術が切り拓く世界の入り口に立っているに過ぎません。この未踏の世界に飛び込んで、新しい研究領域を開拓しようと思う方の挑戦を待っています。

研究者紹介

ATLAS実験

写真 真下哲郎准教授

真下哲郎准教授

世界最高エネルギーの素粒子実験をコンピューティング技術で支える。世界150以上の研究機関のシステムを、あたかも単一のシステムのように扱えるグリッド技術を導入し、改良にも取り組む。

写真 増渕達也助教

増渕達也助教/CERN

ヒッグスがWボソン対に崩壊するモードを解析してヒッグス粒子発見に貢献。現在、新物理の扉となるヒッグスの精密測定を進める。ミューオンスペクトロメータの改良も行なう。

写真 飯山悠太郎助教

飯山悠太郎助教

量子コンピュータや機械学習を素粒子物理学に応用する手法を模索する。高輝度LHCによる処理データ量の増加に備え、計算機システムの改良や新たなデータ解析手法の開発に取り組む。

写真 野辺拓也特任助教

野辺拓也特任助教/CERN

余剰次元など標準理論の枠組みを超えた新物理の探索と、ボソン対終状態を用いたヒッグス機構の検証を行なう。データ取得のためのオンライントリガーシステムを運用する。

写真 森永真央特任助教

森永真央特任助教

予測していない新物理現象の発見を補助するような新しいタイプの人工知能や機械学習アルゴリズムを開発する。飛跡検出器の運用や超対称性理論から予測される暗黒物質候補の探索も行なう。

写真 江成祐二助教

江成祐二助教/CERN

ヒッグスと第三世代のボトム、トップクォークとの結合定数の精密測定などを行なう。また、液体アルゴン電磁カロリメータの改良や、将来を見据えた新たな検出器の開発にも取り組む。

写真 齋藤智之助教

齋藤智之助教/CERN

超対称性粒子や暗黒物質の発見により、素粒子物理学の新展開や宇宙創成の謎の解明を目指す。より高いエネルギースケールの物理を探索するため、検出器やトリガーエレクトロニクスの向上に取り組む。

写真 岸本巴特任助教

岸本巴特任助教

生成される大量のデータを扱うため、世界規模の計算処理とデータ保持・利用を目的としたシステム構築と運転を行なう。ビッグデータを活用した機械学習の研究も取り組む。

写真 齊藤真彦特任助教

齊藤真彦特任助教

機械学習や量子コンピュータなど、新たな技術を応用することにより新物理現象の発見能力拡大を目指す。大規模データを処理するため、グリッドシステムの運用・改良にも取り組む。

写真 永野廉人特任研究員

永野廉人特任研究員

量子コンピュータを用いた場の量子論、多体量子系のシミュレーションを目指し、手法の提案や改良、解析する物理量の提案を行なう。また、計算資源やエラーの見積もりも行ない、削減方法も研究する。

MEG実験

写真 岩本敏幸助教

岩本敏幸助教/PSI

MEGII実験のランコーディネータ、テクニカルコーディネータとして実験を推進し、液体キセノンガンマ線検出器の運転・較正を担当する。実験感度をさらに高め、新物理の発見を目指す。

写真 潘晟特別研究員

潘晟特別研究員/PSI

光センサーMPPCのアニーリングによる検出効率の回復手法を開発し、長期的な実験遂行に貢献する。MPPCの非線形応答の補正や画像認識によるγ線のパイルアップ事象の除去など高精度な解析も目指す。

写真 内山雄祐特任助教

内山雄祐特任助教/PSI

MEGII実験に備え、崩壊するμ粒子から放出される陽電子の振る舞いを最高精度で観測する新たな検出器を開発した。ソフトウェアコーディネータとして、高効率・高精度な解析の実現にも取り組む。

ILC計画

写真 田俊平助教

田俊平助教

ILCの物理的意義を高めるため、電弱対称性の破れの謎に迫るヒッグス自己結合等の研究を進める。また、ILD測定器の物理研究能力を高めるための最適化にも取り組む。

Tabletop実験

写真 難波俊雄助教

難波俊雄助教

一対の電子と陽電子だけからなる最軽量の原子、ポジトロニウムを用い、標準理論とズレのある事象の観測を目指す。将来のブレークスルーとなる検出器の開発も行なう。

写真 稲田聡明特任助教

稲田聡明特任助教

量子コンピュータに纏わる超伝導・光デバイスの開発を行なう。また量子センサーを用いて、人工ブラックホールや重力の量子性に関する研究およびアクシオンの探索を行なう。

その他の素粒子実験

写真 神谷好郎助教

神谷好郎助教/理学系研究科

低速中性子等を用いた重力の検証、未知の相互作用と新粒子探索、高強度レーザー場の下での非摂動論的非線形QEDの研究、次世代量子検出技術の開発などに取り組む。

写真 小貫良行助教

小貫良行助教/理学系研究科

B中間子を用いた物質反物質対称性の破れ測定や未知の素粒子探索実験などで、標準理論を超えた現象の発見を目指す。将来実験で使用する半導体放射線検出器の開発にも取り組む。

写真 井上慶純助教

井上慶純助教/理学系研究科

隠れた光子(hidden photon)を想定した暗黒物質の検出実験や小型ニュートリノ検出器の開発に加え、それらを活用した雷雲由来の放射線バースト現象の観測にも携わる。

在籍者数

(単位:人)

研究室数博士課程修士課程合計
令和2年度8182139
令和1年度8211738
平成30年度7221638
平成29年度9241842
平成28年度9221941
平成27年度8182442
平成26年度9162440
平成25年度9171936
平成24年度9191938
平成23年度9211738
平成22年度9191635

学位取得者数

(単位:人)

博士修士合計
令和2年度7714
令和1年度5813
平成30年度2810
平成29年度61016
平成28年度61016
平成27年度11314
平成26年度31013
平成25年度5712
平成24年度81119
平成23年度369
平成22年度51015

※理学系研究科物理学専攻 浅井研究室、駒宮研究室(~平成29年度)も含む