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大学院教育 “知のプロフェッショナル”の育成

修士・博士課程大学院学生の受け入れ

東京大学大学院理学系研究科では、次代を担う学究の徒に理学の理念と方法論を教授し、未知の問題に対する解決の知恵と手段を備えた独創性豊かな国際的人材を養成するため、毎年、修士課程と博士課程の大学院生を募集しています。
本センターでは、教授・准教授が物理学専攻の研究室を担当し、大学院生を受け入れています。研究室の学生は海外の実験に参加し、各国の研究者と切磋琢磨して実践的な競争力を鍛えあげています。素粒子物理・高エネルギー物理、宇宙物理で人類未踏の領域を拓きたい君たちの、果敢な挑戦を応援します。

研究室紹介

坂本宏教授/ATLAS実験

ATLAS実験に参加し、LHCの衝突実験で発生する膨大なデータの収集と、事象選択のための処理系を開発しています。物理的に興味深いデータを効率的に選び出すため、システム全体で3段階のフィルターが構成されていて、私たちの研究室では、その最も前段に位置する前後方ミューオン(μ粒子)トリガーシステムの開発に取り組んでいます。
具体的には、Thin Gap Chamber(TGC)と呼ばれる検出器を用い、衝突反応で生成されたμ粒子を検出し、そのデータを取得すべきかの判定を行ないます。TGCは非常に大規模な電子回路系とオンラインコンピュータなどから構成され、そのうちのデータ収集装置の開発を行なってきました。LHCアップグレードのための研究開発も行なっています。
また、真下准教授とともに、世界の研究機関が保有する計算資源を融合させたグリッド網「WLCG(世界LHC計算グリッド)」の開発にも始動時から携わり、「ATLAS地域解析センター」の性能向上に貢献しています。

研究室ウェブサイト

写真 坂本宏教授

石野雅也教授/ATLAS実験

ヒッグス粒子の発見は、「標準理論」の完成に至る偉大な金字塔です。しかし、自然の真の姿はまだ謎に包まれたまま、それを明らかにする道程はまさにこれから始まります。
その鍵を握るのが、世界最高エネルギーの加速器LHCでの衝突実験です。未知の新粒子を発見し、その性質を精査する。この積み重ねにより、標準理論の向こう側に広がる大きな物理(より高次の対称性、真空の構造)を明らかにすることができるはずです。そのために取り組んでいるのが、高性能トリガーシステムの研究開発です。現行システムは、1秒間に4,000万回発生する粒子衝突事象から、新粒子の発生を一瞬で判断して記録することができます。
その運用と並行して、最新のエレクトロニクス技術を導入することで、新粒子発生事象を圧倒的な高効率で選び出す次世代システムの準備を進めています。こうした研究を通じて、大学院生が次代を担う研究者として飛躍していける土壌づくりにも力を入れています。

写真 石野雅也教授
写真 川本辰男准教授

川本辰男准教授/ATLAS実験

LHCは今後10年以上にわたり、世界最高のエネルギーフロンティア加速器であり続けます。私たちの研究室はATLAS実験に参加し、ヒッグス粒子の精密検証や、私たちが予測もしない大発見を目指しています。
新しい物理の探索には、LHCのさらなる性能向上が不可欠です。それには、エネルギー出力の増大に加えて陽子ビームを衝突させる頻度(ルミノシティ)の向上も求められ、LHCのルミノシティを約10倍に上げる高輝度加速器(HL-LHC)へのアップグレードが計画されています。
私たちの研究室は、それに対応してATLAS検出器の性能を高めるべく、μ粒子検出装置であるミューオン(μ粒子)スペクトロメーターのアップグレードにも取り組んでいます。陽子ビーム衝突点に最も近いSmall Wheelという部分を新しい検出器で置き換える計画を提案し、そのための新しい高性能検出器の開発と建設を国際的なグループと一緒に進めています。

研究室ウェブサイト

写真 田中純一准教授

田中純一准教授/ATLAS実験

宇宙の基本法則を解明するため、「エネルギーフロンティア」の最前線であるATLAS実験に参加し、標準理論で説明できない現象や新粒子の探索に取り組んでいます。
研究室として力を入れているのが、ATLASで検出されたデータの解析と、LHCの性能向上に対応して検出器をアップグレードのための研究開発です。
データ解析では、ヒッグス粒子が2つの光子に崩壊する事象の解析グループの責任者として、ヒッグス粒子発見という大きな成果を挙げることができました。今後も標準理論を超える新しい物理の開拓を目指し、超対称性粒子、コンパクト化された余剰次元の探索など、研究をさらに前に進めていきます。
ATLAS検出器のアップグレードについては、液体アルゴン電磁カロリメータの読み出し部分のデ-タ転送の高速化や、FPGAを用いたエネルギー再構成アルゴリズムの研究開発に取り組んでいます。

研究室ウェブサイト

森俊則教授/MEG実験・ILC計画

宇宙初期に実現していたと考えられる素粒子と力の大統一(超対称大統一理論)を検証するため、PSI(ポールシェラー研究所)を研究拠点に国際共同実験MEGを推進し、標準理論では起こりえないμ粒子の崩壊を探索しています。
MEG実験は、大統一理論やニュートリノのシーソー理論など超高エネルギーの物理から期待される崩壊分岐比に到達可能な世界唯一の実験として国際的に注目されています。国際共同研究グループ全体を統括する実験代表者/スポークスパーソンとしてMEG実験の物理研究を主導するのが私の役割です。現在、MEG実験を発展させたMEG II実験を準備しており、実験感度を上げて新しい物理の兆候を得ることを目指しています。
また、10年以上先を視野に入れ、我が国の高エネルギー物理学の将来計画の検討・策定にも取り組んでいます。ILC計画についても、国際的な委員会で検討を進めるとともに、日本での実現に尽力しています。

研究室ウェブサイト

写真 森俊則教授
写真 山下了特任教授

山下了特任教授/ILC計画

CERNのLHCで新しい物理・新現象発見の機運が高まるなか、次世代のエネルギーフロンティアを担う加速器実験の計画が進められています。ILCはその最有力候補です。私もILC戦略会議議長となり、欧・米・アジアの国際協力のもと進めています。
現在、研究開発や国際的な組織間での合意形成に邁進しており、ILC計画の根幹部分の子細を決める重要なフェーズにきています。日本の北上山地が有力候補として挙がっており、日本誘致に力を入れています。
私たちの研究室は、主にILDと呼ばれる測定器の開発に参加し、ターゲットとなる物理現象のシミュレーションや測定性能評価においてリーダーシップを発揮しています。
また、国内の大強度陽子加速器施設であるJ-PARCにて、世界最高強度での超低エネルギー中性子を用いた素粒子実験を行なうほか、学外で出張授業を開催し、素粒子物理学に対する社会の関心と理解を高めるアウトリーチ活動にも数多く取り組んでいます。

研究室ウェブサイト

大谷航准教授/MEG実験・ILC計画

私たちの研究室では、粒子加速器を用いた素粒子物理の実験的研究を行ない、素粒子の基本相互作用や宇宙創成の謎の解明に向けて、日々の研究活動に取り組んでいます。活発な研究活動を行ないつつ、測定器開発から物理データの解析まで、幅広くこなせる足腰の強い実験物理研究者の育成にも力を入れています。
研究分野は大きく次の2つです。ひとつが、超対称大統一理論をはじめ、新物理の決定的証拠となる「μ→eγ崩壊」事象を世界最高感度で探索するMEG実験、もうひとつが、世界の素粒子物理学の次世代基幹プロジェクトと位置づけられるILC計画です。
MEG実験では、物理解析責任者として実験を牽引するとともに、究極感度でのアップグレード実験MEG IIに向けて測定器の開発・建設を主導しています。ILC計画では、新しいコンセプトに基づいた最も有力な測定器とされるILDの開発を、これまで培った経験と実績を踏まえて進めています。

研究室ウェブサイト

写真 大谷航准教授
写真 駒宮幸男教授

駒宮幸男教授(理学系研究科)/ILC計画

ヒッグス粒子の発見は、物理学が次のパラダイムに入る突破口を開きました。最先端の知を結集するILC計画は、LHCとの相乗効果が期待されています。私は計画全体を管理統括するLCB(リニアコライダー国際推進委員会)の委員長を務め、計画を推進しています。LCBの監督のもと、実働組織のLCC(リニアコライダー・コラボレーション)が具体的な検討を行なっています。研究室では、ILCに導入予定のILD測定器の研究開発に取り組み、性能とコストの鍵を握るカロリメータの光センサー開発に、特に注力しています。
教育方針は、学生が大型国際共同研究で活躍することで、その準備として小規模実験も実施しています。一例が超冷中性子の研究で、フランスのラウエ・ランジュバン研究所において、量子が地球の重力場に束縛される状態を高精度で観測しました。また、レーザー干渉を用いた電子加速器の世界最小ビームサイズの測定研究も行なっています。

研究室ウェブサイト

浅井祥仁教授(理学系研究科)/ATLAS実験・Tabletop実験

CERNのLHCでは、2015年6月に待望の第2期運転が開始され、物理学の教科書を書き換える大発見に向けた実験が行なわれています。ATLAS日本グループでは、従来からの物理解析チーム責任者に加え、2015年にグループの共同代表者に就任しました。日本陣営がヒッグス粒子発見に継ぐ貢献を果たせるよう、国際的な激しい競争の中で研究をリードしていきます。
第2期実験においても、研究テーマの中心は「ヒッグス」です。他の研究室とともに物理解析を行ない、標準理論を超える新物理の発見を目指して超対称性粒子や余剰次元の探索に力を入れています。
また、国内では「光」と「真空」をテーマに独創的なアイデアで斬新な素粒子実験を行なっています。それが、加速器を用いない「テーブルトップ実験」です。徹底した技術開発により、加速器では到達不能な高いエネルギー領域の物理を間接的に検証し、未解明の宇宙誕生の謎に迫ります。

研究室ウェブサイト

写真 浅井祥仁教授

研究者紹介

ATLAS実験

写真 真下哲郎准教授

真下哲郎准教授

世界最高エネルギーの素粒子実験をコンピューティング技術で支える。世界150以上の研究機関のシステムを、あたかも単一のシステムのように扱えるグリッド技術を導入し、改良にも取り組む。

写真 江成祐二助教

江成祐二助教/CERN

ヒッグスと第三世代のクォークとの結合定数の精密測定などを行なう。また、液体アルゴン電磁カロリメータの改良や、将来を見据えた新たな検出器の開発にも取り組む。

写真 奥村恭幸助教

奥村恭幸助教/CERN

標準理論を超える物理が予言する新現象の発見を目指し、高エネルギー陽子・陽子衝突実験の大統計データ解析を遂行する。検出器システムの運転と、改善のための研究開発も行なう。

写真 片岡洋介特任助教

片岡洋介特任助教

物理解析のほか、検出器やソフトウェアの開発を行なう。検出器の性能向上のため、新技術を用いたマイクロメガス検出器を製作。NewSmallWheelの建設にも取り組む。

写真 岸本巴特任助教

岸本巴特任助教

ATLAS実験で生成される大量のデータを扱うため、世界規模の計算処理とデータ保持・利用を目的としたシステムの構築と運転を行なう。LHC-Run2に備え、システムの改良にも取り組む。

写真 寺師弘ニ助教

寺師弘ニ助教/CERN

余剰次元や複合ヒッグス模型など、新物理を探索するグループの解析計画を主導する。新粒子を確実に発見するため、検出器内の信号を網羅的に捕捉するプログラムを考案する。

写真 増渕達也助教

増渕達也助教/CERN

ヒッグスがWボソン対に崩壊するモードを解析してヒッグス粒子発見に貢献。300人超の解析グループの責任者を務めた。ミューオンスペクトロメータの改良も行なう。

写真 澤田龍特任助教

澤田龍助教/CERN

取得した実験データを物理解析するための、コンピューティングとソフトウェア開発を行なう。東京大学に設置した地域解析センターの安定した運用と改善にも努める。

写真 齋藤智之特任助教

齋藤智之特任助教/CERN

超対称性粒子の発見により、素粒子物理学の新たな展開や宇宙創成の謎の解明を目指す。ATLAS実験では、より高いエネルギー領域を探索するため検出器のアップグレードに取り組む。

MEG実験

写真 岩本敏幸助教

岩本敏幸助教/PSI

MEGII実験に向け、検出器のアップグレードを行なう。主に液体キセノンガンマ線検出器の開発・建設・運転を担当する。観測感度をさらに高め、新物理の発見を目指す。

写真 家城佳特任研究員

家城佳特任研究員/PSI

液体キセノンガンマ線検出器に導入する光センサーMPPCの開発・試験を主に行なう。日本企業と共同で新たなセンサーを開発し、超高精度なγ線の測定を目指す。

写真 内山雄祐特任助教

内山雄祐特任助教/PSI

MEGII実験に備え、崩壊するμ粒子から放出される陽電子の振る舞いを最高精度で観測する新たな検出器を開発する。新型センサーを導入し、独創的な設計を提案した。

ILC計画

写真 田邉友彦特任助教

田邉友彦特任助教

測定器ILDの設計最適化と、データ解析アルゴリズムの研究開発に取り組む。ILCで期待されるヒッグス粒子の精密測定や、暗黒物質粒子の発見感度の評価を目指す。

写真 田俊平特任研究員

田俊平特任研究員

ILCの物理的意義を高めるため、電弱対称性の破れの謎を紐解くヒッグス自己結合等の研究と、ILD測定器の物理研究能力を高めるための最適化に取り組む。

Tabletop実験

写真 難波俊雄助教

難波俊雄助教

一対の電子と陽電子だけからなる最軽量の原子、ポジトロニウムを用い、標準理論とズレのある事象の観測を目指す。将来のブレークスルーとなる検出器の開発も行なう。

写真 稲田聡明特任研究員

稲田聡明特任研究員

強磁場を発生する種々のマグネットを開発する。それらと高輝度放射光やレーザー光を用いて、真空の非線形物理の精密測定及び未発見素粒子の高感度探索を行なう。

その他の素粒子実験

写真 神谷好郎助教

神谷好郎助教/理学系研究科駒宮研究室

次世代レプトンコライダーのための測定器開発、低速中性子を用いた重力の検証実験、高強度レーザー場の下での非摂動論的非線形QEDの研究などに取り組む。

写真 小貫良行助教

小貫良行助教/理学系研究科相原研究室

高エネルギー加速器研究機構のSuperBファクトリー実験で標準理論を超えた現象の検出を目指す。将来の高エネルギー実験で使用可能な半導体放射線検出器の開発も行なう。

写真 井上慶純助教

井上慶純助教/理学系研究科

隠れた光子(hidden photon)を想定した暗黒物質の検出実験や小型ニュートリノ検出器の開発、それを活用した雷雲由来の放射線バースト現象の観測にも携わる。

大学院生受け入れの推移

(単位:人)

研究室数博士課程修士課程合計
平成28年度6131225
平成27年度6111627
平成26年度7121729
平成25年度6101121
平成24年度591322
平成23年度5101121
平成22年度5101020

学位取得の推移

(単位:人)

博士課程修士課程合計
平成28年度6 (4)10 (6)16 (10)
平成27年度1 (0)13 (9)14 (9)
平成26年度3 (1)10 (7)13 (8)
平成25年度5 (2)7 (3)12 (5)
平成24年度8 (4)11 (8)19 (12)
平成23年度3 (2)6 (3)9 (5)
平成22年度5 (4)10 (7)15 (11)

※当該研究施設を利用して学位を取得した学内の人数、( )数は左記研究室在籍者