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大谷研究室 茂木駿紀氏が日本物理学会2022年秋季大会学生優秀発表賞を受賞

毎年秋に開催されている日本物理学会では、大会における若手(正会員のうちの大学院生または学生会員)の優秀な発表を奨励し大会をより活性化するため、「学生優秀発表賞(素粒子実験領域)」が2020年度より設けられました。
本センターでは、各研究室所属の修士課程・博士課程の大学院生20名以上が毎回参加し、ATLAS実験・MEG実験・ILC実験・中性子実験等での最新の研究成果をプレゼン資料に纏めて、素粒子実験領域の全研究者の前で発表しています。
このたび、大谷研究室博士課程3年の茂木駿紀氏は、茨城県東海村・J-PARCセンターにおける中性子寿命測定実験で最新の解析結果を発表し、学生優秀発表賞を受賞しました。

茂木駿紀

対象発表

J-PARC/BL05における中性子寿命測定実験:2022年までの中性子寿命解析の現状 発表資料

受賞理由

中性子の寿命はこれまで主に2つの異なる手法によって測定されてきましたが、両者の測定値間には偶然では説明できない差が存在しており、素粒子物理学の未解決問題の一つとなっています。この中性子寿命の乖離問題解決を目指し、従来手法とは異なる第3の実験方法によって中性子寿命を測定する実験がJ-PARCで行なわれています。
今回の講演ではJ-PARC MLF BL05(NOP)の偏極パルス中性子ビームを用いて行なってきた中性子寿命測定実験の測定状況と、精度改善のために行なってきた測定・解析のアップグレードについて発表しました。
中性子光学系の大型化によるビーム強度増加を実現したこと、検出器動作ガスの圧力を低下させ低バックグラウンド環境での測定・解析手法が確立したこと、並びに実験の今後の展開について報告しました。本発表で示した精度向上に向けたアップグレードと実験の展望が評価され、今回の受賞へと繋がりました。

感想と今後の抱負

中性子寿命は物理学における重要なパラメータであり、中性子寿命乖離問題の解決には世界中の研究者が期待していると思います。この度の受賞は本実験の進展に多くの注目が集まっていることの表れであり、その研究成果が評価されたことは大変嬉しい限りです。これまで多くのご指導・ご助言賜りました実験グループの皆様、関係者の皆様に心より感謝申し上げます。
本実験は計画の段階から数えて10年以上の歳月を経てきました。ようやく当初の目標である0.1%の統計精度到達が目前まで迫っており、寿命乖離問題の解決に大きな影響を与えるであろう結果を発表できる段階に近づきつつあります。物理解析において改善できる点はまだ多く残っておりますので、さらなる精度向上に向けて研究に精進していきたいと思います。

関連リンク

日本物理学会学生優秀発表賞(関連サイト)

J-PARC MLF BL05(NOP)(関連サイト)