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大谷研究室 大矢淳史氏が日本物理学会2022年秋季大会学生優秀発表賞を受賞

毎年秋に開催されている日本物理学会では、大会における若手(正会員のうちの大学院生または学生会員)の優秀な発表を奨励し大会をより活性化するため、「学生優秀発表賞(素粒子実験領域)」が2020年度より設けられました。
本センターでは、各研究室所属の修士課程・博士課程の大学院生20名以上が毎回参加し、ATLAS実験・MEG実験・ILC実験・Tabletop実験等での最新の研究成果をプレゼン資料に纏めて、素粒子実験領域の全研究者の前で発表しています。
このたび、大谷研究室博士課程3年の大矢淳史氏は、スイス・ポールシェラー研究所(PSI)におけるMEG II実験で実験開始前の2021年に取得した試験データの解析結果を発表し、学生優秀発表賞を受賞しました。

大矢淳史

対象発表

MEG II実験2021年物理データの解析 -陽電子測定の評価と物理解析の現状- 発表資料

受賞理由

MEG II実験は2021年に試験的なデータ取得を行ない、2022年より本格的な物理データ取得を開始しました。今回の学会発表では特に2021年に取得したデータの解析にフォーカスしており、検出器のパフォーマンスを報告したほか、それに基づいて2021年データでの探索感度の評価を行ないました。
私が纏めた学会報告は2つの意味で重要となる結果でした。一つ目は全てのパフォーマンスを実データに基づいて感度を見積もった点で、これは今回の報告が初の試みでした。もう一つは、実質的に7~8週間程度と限られた期間で取得された2021年データでも先行のMEG実験(2008~2013年)の感度に迫っている点です。これは、2022年以降の物理データ取得により先行実験を大きく更新できることを示唆しています。今回はこれらの結果に注目を集めました。

感想と今後の抱負

今年の学会は2019年秋季大会以来3年ぶりの対面開催でしたが、オンライン開催の時と比べて質疑応答やディスカッションが盛り上がった印象を受け、その意味でも大変実りのあるものであったと思います。また、本研究は国外の機関も含めた多くの共同研究者の尽力によって実現しているものでありますので、この場をお借りして感謝を述べたいと思います。
近年、高エネルギー物理分野ではBelle II実験やμ粒子の異常時期能率の測定などが進んでおり、フレーバーの知見の大きな進展が期待されています。そのなか、荷電レプトンフレーバー実験の先駆けとしてMEG IIは重要な位置づけにありますので、いち早く結果を出すことは分野の進展にも不可欠だと考えており、今回の受賞を励みに研究を進めていきたいと思います。

関連リンク

日本物理学会学生優秀発表賞(関連サイト)