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石野研究室 田中碧人氏が日本物理学会2020年秋季大会学生優秀発表賞を受賞

毎年春と秋に開催されている日本物理学会では、大会における若手(正会員のうちの大学院生または学生会員)の優秀な発表を奨励し大会をより活性化するため、「学生優秀発表賞」が設けられました。
本センターでは、各研究室所属の修士課程・博士課程の大学院生20名以上が毎回参加し、ATLAS実験・MEG実験・ILC実験・Tabletop実験での最新の研究成果をプレゼン資料に纏めて、素粒子実験領域の全研究者の前で発表しています。
このたび、石野研究室修士課程2年の田中碧人氏は、スイス・欧州合同原子核研究機構(CERN)におけるATLAS実験の将来計画(高輝度LHC)に向けた検出器システムの新型制御回路と動作試験結果を発表し、その内容や積極的な意欲が評価され、学生優秀発表賞を受賞しました。

田中碧人
TGC検出器開発プロジェクトメンバーとともに、本人右から2番目

対象発表

高輝度LHC-ATLAS実験に向けたTGC検出器フロントエンドにおけるエレクトロニクスシステム制御回路の開発及び機能試験
発表資料

受賞理由

高輝度LHC-ATLAS実験のThin Gap Chamber(TGC)検出器のフロントエンド回路では、システム運用時の自由度が圧倒的に優れているFPGA(Field Programmable Gate Array)を使った高速光通信を介して、バックエンド回路へ大量のデータを転送します。本研究では放射線環境下に設置されるフロントエンド回路を安定して動作させるため、これらを遠隔制御するシステムを新たに設計し、特にその制御系で中心的役割を果たすSystem-on-a-Chip(SoC)を搭載した制御回路を開発しました。
学会講演では当制御回路の設計と試作機の開発・試験状況について発表し、(1)当制御回路が1500個のFPGA搭載型フロントエンド回路のモニター・制御を行なえること(2)高輝度LHC実験における高い放射線環境において高い信頼性を保証できること、これら2つの結果を示しました。
本研究における成果・経験のエッセンスが、他の大規模素粒子実験などで広く応用可能であるという点が多くの審査員によって高く評価された結果、学生優秀発表賞を受賞することができました。

感想と今後の抱負

TGC検出器に携わるATLAS-JAPANメンバーの多くの意見をもとに度重なる改善を加えることで、伝えたかった研究成果の重要な点を余すことなく学会参加者に伝えることができました。また、従来とは異なりオンライン形式であったにも関わらず、学会運営委員により快適な発表環境が整備されていたため、普段通りに研究成果を発表できました。今回の発表に協力してくださった皆様に心から感謝を申し上げます。
また、この賞において、私を含めた制御回路開発プロジェクトメンバーの研究成果が高く評価され、当制御回路を他の素粒子実験でも活用したいという意見を多くいただけたことを大変嬉しく思います。
今後は、当制御回路の開発を続けると同時に、ATLAS実験の取得データを使用した物理解析を始めていき、素粒子物理実験に貢献し続けていきたいと思います。

関連リンク

●日本物理学会学生優秀発表賞(関連サイト)