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齋藤智之助教が「ATLAS Outstanding Achievement Award 2018」を受賞

2018年10月11日、ATLAS実験グループはCERNで開催されたコラボレーションミーティングにおいて、特に優れた研究者の功績を称え、表彰式を執り行いました。同グループが2014年に設立した「Outstanding Achievement Awards」は、物理解析を除くすべての研究分野での顕著な貢献を表彰しています。
表彰審査委員会委員長のJim Pilcher氏は「ATLAS実験は、検出器を上手く機能させることに関与する創造的な研究者らによって導かれています。」と式典でコメントし、受賞者のこれまでの努力を賞賛しました。

ATLAS受賞式
ATLASスポークスパーソンのKarl Jakobs氏(一番左)と表彰審査委員会委員長のJim Pilcher氏(一番右)と一緒に、セレモニー時の全体写真。後方列、右より2番目が齋藤智之助教。

受賞理由

ATLAS初段ミューオントリガシステムのためのバーストストッパーの開発・導入・コミッショニングにおける貢献

受賞に繋がった研究内容

ATLAS実験は、開始当初よりバースト現象によるデータ損失に苦しめられてきました。バーストとはATLAS検出器内のミューオンシステム全体に渡ったノイズ起源の現象であり、数マイクロ秒もの間、検出器が処理しきれない数の極端に多い信号を発生させます。この現象がミューオンシステムをダウンさせ、復旧が完了するまでの間、ATLASのデータ取得を中断せざるをえず、データ損失の主要な原因の一つでした。
東京大学を中心としたATLAS日本グループ研究者やCERNの研究者は議論を重ねてこの改善に取り組み、バーストによるデータ損失を防ぐために「バーストストッパー」システムを新しく開発・導入することにより、真っ先にバーストを検出し、システムのダウンを防ぐことに成功しました。2016年末よりこの新システムを本格的に運用し、バーストの影響からATLAS検出器を保護し、高い効率でデータ取得を可能にしています。
齋藤助教は2017年1月よりATLAS実験グループの初段エンドキャップミューオントリガシステム運転責任者に就き、研究を更に進めています。

ATLASミューオンシステム
ATLAS検出器概要図。ミューオン検出器は左右両サイドに位置し、ミューオンという電子の仲間を検出する。

今後の抱負

現在、LHC第2期実験における最終年度のデータ取得を順調に進めていますが、今後、加速器の性能向上とともにATLAS実験のデータ取得はますます難しくなっていき、システムの改良が常に迫られます。これからもATLAS実験で質の高いデータを取得するためにCERNの実験現場で奮闘し、そしてそのデータを用いて更に高いエネルギースケールの新しい物理を発見したいと思います。

CERNの関連情報

●ATLAS Collaboration News(関連サイト)