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現在の研究内容素粒子とは?素粒子は、目に見えない程の小さな粒子です。粒子といっても大きさなどありません。 最先端の電子顕微鏡でさえ観察することの出来ないほど、小さなものです。 こんなに小さなものを相手に、こやつらの性質を解明しようとしたり、 新しい素粒子を探索したりと、日々、努力しています。 それは、素粒子の研究を続けることで、宇宙の起源に迫れるのではないか、と信じて止まないからです。 少なくとも、宇宙誕生直後、誕生から1秒も経たないうちにたくさんの素粒子が誕生したことが わかっています。 ですから、素粒子の性質を、よくよく理解すれば、今の宇宙がどうやって変化をとげてきたのか、 そして、行く末にどうなってしまうのか、そんなことがわかるようになるかもしれません。 ひょっとしたら、なんで私たち人間が今、こうしてパソコンの前に座っているのかだってわかって しまうかもしれません。 じゃあ、どこでどのように、新しい素粒子を探したり、性質を解明したりするのか、 そして我々が取り組んでいることを少しだけ紹介したいと思います。 1. 最高エネルギーの加速器を用いた素粒子物理の実験 スイス・ジュネーブには、欧州原子核研究機構(通称CERN)と呼ばれる素粒子を愛して止まない人たちが 集まる世界最大の素粒子原子核研究所があります。 CERNは、下の写真のようにジュラ山脈の麓に位置しています。自然豊かでとてもキレイなところです。 研究所には、世界最高の重心系エネルギーで稼働する、世界最大の大きさの加速器LHCがあります。 エネルギーにして、8TeV、大きさは、周長27キロ(写真の赤線)もあります。 この巨大な加速器を使って加速した陽子の固まりと陽子の固まりをぶつけます。 ![]() ![]() 加速された陽子群同士を衝突させ、高いエネルギー状態を作り出します。 このときに、飛び出してくる粒子の中に、今まで誰もみたことのない粒子がいるかもしれません。 これがいわゆる、新粒子探しの方法です。初期宇宙には大きなエネルギーが満ちていて、 そこでは、新しい粒子が生まれては消え、そして また生まれては消える、ということを繰り返していたことがわかっています。 そんな高いエネルギーの中で素粒子は誕生したわけですから、素粒子を作るには、 高いエネルギーが必要そうだということが想像出来ます。 なので、私たち素粒子物理屋は、大きなエネルギーを作り出す為に巨大な加速器を準備しました。 素粒子をみるための顕微鏡です。 この顕微鏡の倍率、すなわちエネルギーをどんどんあげていけば、 宇宙初期にどんな素粒子がいたかを知ることが出来ます。 歴史的にみると、私たち素粒子実験屋は、新しい加速器を作り、エネルギーをあげ、初期宇宙に迫る度に、 新しい粒子を見つけてきました。 今もヒッグス粒子や超対称性粒子などの新しい粒子がホントに出てくるのではないかと、 私たち含め世界中の研究者が毎日ワクワクし、手に汗を握りながらCERNで研究を続けています。 実は、LHC加速器を使った実験は大きくわけて4つあります。日本グループはそのうちの1つである ATLAS実験に参加しています。 ATLASグループは、世界数十カ国、合わせて約3000人といった前代未聞の世界最大実験ブループです。 私たちは、世界中の素粒子実験屋さんたちと協力して、全長にして44mほどの巨大な実験装置を 作り出しました。下の写真が”新粒子を捕らえる”ATLAS実験装置です。 ![]() ![]() 実験装置の中心で、陽子の固まりと陽子の固まりが衝突します。 中心から粒子が四方八方に飛び出すわけですが、 もれなく、飛び出した粒子を捕まえるためにこのような大きな装置になっています。 1.1 ヒッグス粒子探索 1.2 新しいミューオン検出器の開発研究 2. K中間子崩壊における時間反転対称性の破れ探索のための検出器開発 私たちの住む世界は、物質で満たされていることがわかってます。 これはあまりにも当たり前で何も不思議に感じないかもしれません。 でも実はとても不思議なことなんです。 宇宙初期には、物質と反物質がほぼ同数存在していたことがわかっています。 しかし今の宇宙には物質しか見当たりません。 このような異常事態を説明するためには、 時間反転対称性の破れや大きなCP対称性の破れというものがないといけないことがわかっています。 時間反転対称性は、文字通り、 「時間(演算子)を反転させたときに物理法則の対称性が保たれている」ということですが、 この対称性が破れるということは、「未来と過去で物理法則が少しくらい違ったっていい」 ということを表しています。 とっても砕けた言い方をすれば、「タイムマシンで過去や未来へ行くことができない」 と言えるかもしれません。 こんな「時間対称性の破れ」を探す方法の1つに、K中間子というメソン(素粒子の複合体)を 使う方法があります。 K中間子が3体崩壊するときに出てくるミューオンという素粒子のスピンを測定します。 現在、実験は計画段階ですが、茨城県東海村にあるJ-PARCハドロンホールのK中間子ビームを使って 実験することを考えています。 私たちは、実験の中で最も大事な実験装置、ミューオンのスピンを測定する実験装置ーMTPー、 の開発を行なっています。 ![]() 2.1 ミューオン検出器の開発研究 -MTP- |