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last update 2014/05/25


ヒッグス粒子探索




 LHC実験の目的のひとつに、ヒッグス粒子の発見があります。
ヒッグス粒子は、物質に質量を与える、物理学においてとても重要な役割を持つ粒子で、 物理学者たちが長年探し続けてきたものの、いまだ見つかっていません。  LHC実験により、ヒッグス粒子が見つかる可能性は非常に高いと考えられており、 実際に2011年末、LHCでヒッグス粒子の兆候が見えたとのニュースが発表されました。 まさに発見まで秒読み段階、いま一番アツい物理であるといえます!



 さて、私たちが実際にどんなことを行っているのかの話に移ろうと思います。 上の図は、ヒッグス粒子が出来た場合に予想される、ATLAS検出器の反応の様子です。 実際に実験を行い、これと同じような反応が起きたかどうかを調べることで、 ヒッグス粒子の探索を行うわけです。
 ところで、LHC実験によりヒッグス粒子が生み出される確率はとても低く、 陽子と陽子を数兆回衝突させて、やっと1個ヒッグス粒子ができるかも、といった程度です。 ですから、とにかくたくさんの陽子を衝突させ、大量の実験データを集める必要があります。
 私たちは、この大量の実験データの、コンピュータによる解析を行っています。 具体的には、ヒッグス粒子が出来ていたかもしれないデータを残しつつ、 そうでないデータをふるいにかけていくことで、大量の実験データのなかから、 ヒッグス粒子を見つけるという作業を行います。 実際にヒッグス粒子の発見に直接携われる、とてもエキサイティングな研究です!


そうこうするうちに、これらの努力がみのって、2012年にATLASとCMSはヒッグス粒子の発見を 発表しました。 これまでのデータで見るところ標準理論の予言と矛盾はないようです。 これからの課題はしたがって、さらにデータを集めて、もっと詳しくその性質を調べて、 標準理論の検証をしたり、それからのずれはないかと調べて、 標準理論を越える、もっと基本的な、本質的な理解に迫ることであり、 そのための重要な一歩をふみだしたといえるでしょう。 LHCの物理はますますおもしろくなってきました。