LEPコライダーでのOPAL実験


LEP (Large Electron Positron collider)は、スイス・ジュネーヴ郊外の CERN研究所 に1989年に完成した世界最高エネルギーの 電子・陽電子コライダーである。 山手線とほぼ同じ大きさを持つこの加速器は、地下100m、円周27km のほぼ円形のトンネル内に設置されている。 電子と陽電子の衝突エネルギーは約100GeVであり、 弱い相互作用を伝えるZ0粒子の質量にほぼ等しく、 この粒子を大量に生成するのに適している。

東京大学のグループは、DASP・JADEでの経験を生かし、LEPでの実験を 提案し、国際共同実験 OPAL (Omni Purpose Apparatus for LEP)チームを結成した。 この実験は1982年に正式に認められ、1984年には 東京大学理学部素粒子物理国際施設は、10年の事業として 同素粒子物理国際センターとして生まれ変わり、 OPAL実験に臨むことになった。 OPAL実験には現在全世界より 34の研究機関 が参加している。

The OPAL detector
OPAL測定器

The OPAL EM Calorimeter
OPAL電磁シャワーカロリメーター

東大のグループはOPAL測定器のうち最重要部分の一つである 電磁カロリメーター(上図)を担当した。 これは約10,000本の 鉛ガラスカウンターでできており、 その設計・製作・調整・設置には5年を要し、1989年7月に 実験準備が整った。 ここでもJADE実験の経験が十分に生きて、 全数の鉛ガラスカウンターが、2000年末の運転終了に至るまで 高性能を保って作動し続けた。

LEPで最初のZ0粒子 の生成は、同年8月のテスト運転中に、 このOPALの鉛ガラスカウンターが捕らえた。 その後1995年の夏までに、およそ500万の Z0粒子の生成事象を OPALは記録した。 この結果、かつてない精度で Z0粒子の性質を研究する ことができ、 数々の重要な物理成果を あげている。東京大学のグループは、これらのデータ解析においても、 中心的役割を果たしてきた。

LEPはエネルギー増強して LEP2となり、Z粒子の姉妹粒子であるW粒子を対生成することが可能となった。 OPAL実験はW粒子の性質を精密に研究し、また新しい物理の制限領域を大幅に拡大するなど、多くの成果を得た。

東京大学素粒子物理国際研究センターの沿革

hisho@icepp.s.u-tokyo.ac.jp