オルソポジトロニウム寿命問題の解決


(1)オルソポジトロニウムの寿命問題とは?

(2)「標準理論を超える新しい素粒子現象に起因する稀崩壊モード」の探索

(3)過去の寿命測定の問題点と全く新しい方法による寿命測定の提案

日本物理学会誌より



(4)全く新しい方法による寿命測定結果

この方法は、熱化の過程の不定性も、外挿の不定性も受けない全く新しいもので ある。この方法を用いて測定した結果は、

τo-ps = 142.05 +- 0.058 (nsec)

であり、この結果を昔の実験結果と比較した図を示す。 これは、昔の実験と3〜4σ以上ずれているものであり、QEDの予言値と 一致するものである。 また、この測定を通して、オルソポジトロニウムの熱化過程についても 考察し、「十分熱化するには、今まで考えられているより、 はるかに長い時間が必要である」ことが分かった。 これは、従来の寿命測定実験の持つ二つの問題のうち、 前者の「十分熱化していないオルソポジトロニウムの効果」 が、寿命測定の結果を歪めていた可能性が高いことを示すものである。 論文は、PDF です。


(5)ミシガン大学、問題認める

昔の寿命測定は、主に米国ミシガン大学に於いて行われてきた。 この連中、なかなか我々の結果を認めようとしかったが、 1998年になり、Phys. Rev. Lett.に掲載された 論文 (Phys. Rev. Lett. 80(1998) 3727)に於いて、 オルソポジトロニウムの「熱化過程」の測定結果を報告し、 「The slow thermalization rates determined herein demand further investigation of incomplete thermalization in precision o-Ps decay rate measurements 」 と、昔の測定が「熱化過程」をちゃんと扱っていなかったことを認めた。


(6)最近の理論計算

2000年にAdkinsは、NRQEDの手法を用いて、O(α2)の評価を行ない、

τQED= 142.046 (nsec)

を得ている (論文 (Phys. Rev. Lett. 84(2000) 5086))。 この結果は、我々の測定と一致している。

現在、実験精度をあげて、この理論の更なる精密検証 を行なっている。


(7)ミシガン大学、問題認める その2
彼らは熱化が不十分だったとして、新しい論文 J. Phys. B: At. Mol. Opt. Phys. 33(2000) 1047 では、,実験値としてWestbrook と我々の平均値を使っています。 また、この論文の中では事実上の敗北宣言とも読める文章もあります。


(8)陣内君の途中結果
ICEPPの陣内君が中心となって、 時間特性を著しく向上させて新しい測定を行なっている。 その中間結果がまとまったが、これは、95年の我々の結果と一致するものである。 95年の我々の結果とこの結果を合わせると、

τo-ps = 142.047 +- 0.049 (nsec)

になります。まだ誤差は、350ppmです。 これを抑える更なる努力を続けています。(paper: Ps file, japanese ps file ) しかし、ミシガンはいまだにこの結果をみとめてくれません。

(9)陣内君の最終結果
2001年、苦節3年、陣内君の最終結果が出ました。

τo-ps = 142.053 +- 0.032 (nsec)

になります。誤差は、ついに、230ppmです。(学位論文:Ps file) (投稿論文は、(11))

(10)最近の理論計算

2002年にAdkinsは、(α2)の評価を行ない、

τQED= 142.046 (nsec)

を得ている (論文 (Ann. Phys. 295(2002) 136))。

(11)陣内君D論文投稿
2003年4月 Phys. Lett に投稿。 8月accept (paper:pdf file)


(12)ミシガン 我々と同じ結果を発表!!
2003年5月23日のPhys. Rev. Lett. にミシガン大学の新しい結果

τo-ps = 142.037 +- 0.026 (nsec)

我々の結果と完全に一致した。!! 熱化の不完全なものがあったことを認めているが、 これを我々が指摘したことについては全くふれていない。 赤のThis measurementが陣内君のD論。赤の Phys. Lett. Bが私のD論。 一番下が、ミシガンの (ミシガンのpaper:PDF file)

(13)ETHでの conference proceedings
(paper:pdf file)

Publication List


Lifetime measurements


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Comments to Shoji.Asai@cern.ch (Last modified:03/09/19)