文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究 (研究領域提案型)
領域番号:2803
研究期間:平成28-32年度 (2016-2021.3)
領域代表者:浅井祥仁 (東京大学大学院理学系研究科)
ヒッグス粒子発見後の素粒子物理学の新展開
 ~LHCによる真空と時空構造の解明~
研究概要
本領域の研究目的は以下の3つである。
1. LHC加速器を用いて新しい素粒子現象の発見
2. ヒッグス粒子と新現象を用いて「真空・時空・素粒子」を融合し新しいパラダイムの創成
3. 新しいパラダイムの更なる実験的検証に向けた次世代エネルギーフロンティア実験の中核となる技術開発
エネルギーフロンティア実験の研究者と理論研究者が協力して計画研究班を組織し、領域として研究を推進する。

計画研究班
本領域では総括班を中核に3つの研究項目に対し「時空班」、「真空班」、「重粒子班」を組織し、 各研究項目班ごとに2つの計画研究班を設けた。
計画研究班 研究課題名 研究代表者
総括班・
国際研究支援班
ヒッグス粒子発見後の素粒子物理学の新展開
~LHCによる真空と時空構造の解明~
浅井 祥仁 (東京大)
時空班A01(実験) 超対称性の発見で構築する新たな時空像 陣内 修 (東工大)
時空班A02(理論) 標準模型を超える素粒子模型と新たな時空像 山口 昌弘 (東北大)
真空班B01(実験) ヒッグス粒子で探る真空と世代構造 花垣 和則 (高エネ研)
真空班B02(理論) 電弱対称性の破れと世代構造の統一的真空像 久野 純治 (名古屋大)
重粒子班C01(実験) トップクォークで探る真空と時空 戸本 誠 (名古屋大)
重粒子班C02(実験) LHCでの未知重粒子探索 石野 雅也 (東京大)

研究目的と期待できる成果
ヒッグス粒子の発見は、2つの重要な意義がある。 一つ目は、真空は空っぽではなく、ヒッグス場で満ち、その変化(相転移)で宇宙が進化してきたことの実験的な証拠である。 二つ目は、このような軽いヒッグス粒子が存在することは、ヒッグス粒子の質量(125GeV)の近く、つまり、「テラスケール」に新しい素粒子現象があることの間接的な証拠である。

本領域の研究者は、ヒッグス粒子のこのような重要性を鑑み、ヒッグス粒子の発見に極めて大きな貢献をしてきた。 我々は、世界最高エネルギー加速器 LHC (Large Hadron Collider)やLHCを用いたアトラス実験の検出器の開発・製作・運用を国際協力で行ったきた。 更に、ヒッグス粒子発見のデータ解析においても研究責任者をつとめるなど主導的な役割を果たしてきた。 我々がこのヒッグス粒子の研究をさらに推し進めることは国際的にも強く要望されている。 本領域では、ヒッグス粒子のみならずヒッグス粒子を超え「真空、時空、素粒子」の新しいパラダイムを構築するユニークな研究を展開する。

本領域は、次の3段階構成で研究を推進し「新しい領域」を形成する。
  1. LHC加速器を用いて、ヒッグス粒子から期待されるテラスケール領域で新しい素粒子現象を発見する。
  2. ヒッグス粒子や発見された新しい現象を用いて、真空や時空の性質を探り、「真空、時空、素粒子」を融合し、新しいパラダイム(右図)を構築する。
  3. このパラダイムを検証・発展させるため次世代のエネルギーフロンティア加速器実験の中核となる技術開発を行う。
下図に示すように「時空班」「真空班」「重粒子班」は各段階で密接な連携を維持し、領域全体として研究を展開する。



本領域の研究から次のような成果が期待できる。
  1. 軽いヒッグス粒子の存在が示唆するテラスケールの新現象を確実に発見する。 最も有望な新現象は「超対称性粒子」である。 超対称性粒子の研究から、暗黒物質を同定し宇宙の進化を解明する。 また、非常に高いエネルギースケールでの力の大統一(GUT)の具体的な描像を得ることも可能である。 超対称性は時空そのものの対称性であり、マクロな時空の描像をミクロな世界(素粒子)に結びつける大発見である。
  2. 発見したヒッグス粒子の詳細な研究から、ヒッグス場の正体、そして電弱対称性を破る真空を導くヒッグスポテンシャルの起源、素粒子の質量の世代構造の起源を探る。 宇宙の真空の状態を解明し、宇宙がどのように進化し、今後どのような運命をたどるかを決定する。 さらに、超対称性やGUTとヒッグス粒子の研究を融合し、新しい真空像を得るも可能である。
  3. 新たに切り拓かれる研究領域を更に広げる次世代の最先端エネルギーフロンティア実験の核となる超伝導技術や検出器技術を開発する。

領域推進計画
総括班は、本領域の研究目的を達成するため、各計画研究の研究内容を結びつけ、協力の調整や公募研究の促進・支援を行う。 また、国内外の研究者や一般社会へ向けた情報発信なども行う。 総括班の役割と計画研究や外部との関係を下図に示す。
  1. LHCという共通のファシリティーを用いて、3つの研究項目班が新現象の発見を目指す。 検出器の性能の評価・理解やバックグラウンド事象の理解など、共通する研究が多く、総括班が中心となって協力・連携を行う。
  2. 得られた成果を核に、「真空、時空、素粒子」の新しいパラダイムを創成し、新しい研究領域を形成する。 これには、他の領域や暗黒物質研究、公募研究、諸外国の研究者との協力が重要になり、 総括班と国際研究支援班が中心となって連携をはかる。


問い合わせ先
東京大学 大学院理学系研究科 浅井祥仁(領域代表) Shoji.Asai[at]cern.ch
東京大学 素粒子物理学国際研究センター 田中純一(事務担当) Junichi.Tanaka[at]cern.ch
東京大学 素粒子物理学国際研究センター 秘書室 hisho[at]icepp.s.u-tokyo.ac.jp
TEL 03-3815-8384   FAX 03-3814-8806 (秘書室)

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