外部資金による大型事業研究活動

科学技術振興機構受託研究
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先端国際共同研究推進事業(ASPIRE)(JPMJAP2316)
先端量子技術プラットフォームと国際頭脳循環による量子ネイティブ人材育成拠点(令和5~10年度)
- 日本側研究代表者
- 東京大学素粒子物理国際研究センター・客員教授・浅井祥仁
本研究では量子センサー、量子ハードウェアと量子ソフトウェア、それらを繋ぐ量子コネクト技術の先端4分野で研究開発を進め、量子技術を統合的に接続する「先端量子技術プラットフォーム」の構築を目指す。日本側チームは超高精度量子センサー開発と応用、量子・古典融合計算手法、量子AI、スピントロニクス技術の開発を行ない、相手側チームは量子機能性材料の開発やトポロジカル量子物性の研究、固体スピンセンサーや量子メモリ、量子ネットワークの実装研究を行なう。両国チームの研究を通して先端量子技術プラットフォームを構築し、基礎科学や物性問題の解明、量子計測・量子計算による材料開発など、NISQの制約を超えた量子技術の社会実装を加速する。両研究機関で進める共通の教育カリキュラムと人材雇用・育成プログラムによって、国際頭脳循環による量子ネイティブ人材の育成拠点を構築する。
科学研究費補助金
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国際共同研究加速基金(国際先導研究)(24K23939)
力の統一的理解に向けたエネルギーフロンティアの次世代への展開と国際的人材育成(令和6~12年度)
- 研究分担者
- 東京大学素粒子物理国際研究センター・教授・石野雅也
本研究の目標は、素粒子物理学最大の謎であるヒッグス機構の全貌を解明し、宇宙誕生直後の高エネルギー世界で成立する時空と力を統一的に記述する物理法則を発見することである。それに向けて、ヒッグス場の徹底的な測定により、フェルミオンの世代構造やヒッグスポテンシャルに対する理解を格段に深める。さらに、超対称性理論の予言する電弱ゲージーノ等の未知重粒子の探索・発見により、統一理論構築に向けた指針を与える。
ヒッグス研究の深化のためには次世代ヒッグスファクトリーが必要であることから、その計画実現の鍵となる測定器技術開発を推進する。加速器検出器双方で測定器全体の性能を決定しうる重要な要素である超伝導磁石、半導体ピクセル検出器、AIを組み込んだ電子回路等を開発する。
以上の研究活動を通して、将来計画を主導する若手研究者を育成し、我が国がヒッグスファクトリーを主導する礎を築く。 -
国際共同研究加速基金(国際先導研究)(22K21350)
国際協力によるミューオン素粒子物理研究の新展開(令和4~10年度)
- 研究分担者
- 東京大学素粒子物理国際研究センター・教授・大谷航
20世紀末以降、電子の振舞いの深い理解に根ざしたエレクトロニクスが驚異的に発達した。その後も電子の量子的な振舞いを活かした量子センサーの発達は目覚ましい。電子とほぼ同じ性質を持ち質量だけがその200倍ほど重いミューオンは1930年代に発見され詳細に調べられてきた。それは驚くほど電子に似通っていたが、電子よりも重いために電子とニュートリノに崩壊し、この詳細な研究が素粒子の標準模型の確立に貢獻した。一方で、近年はこの標準模型のほころびがミューオンに関わる現象に見えており、ミューオンについてのより深い理解が期待されている。また、ミューオンは物質の性質を調べるためにも有用で様々な分析に利用されつつある。
本研究では、ミューオン素粒子研究を通じた国際協力研究を遂行し、優秀な若手人材の育成をはかり、今後さまざまな用途への応用が期待されている大強度ミューオン源の開発を実施し、将来計画を策定する。 -
学術変革領域研究(A)(25H01291)
現象を視る:ミューオンの即時検出技術で拓く素粒子現象の探求と応用(令和7~11年度)
- 研究代表者
- 東京大学素粒子物理国際研究センター・助教・齋藤智之
本研究は、アトメートルスケールの素粒子現象を「視る」ための技術の革新と、その応用展開を通じて、ミューオン計測技術の総合的な進化を目指すものである。
高速ミューオン計測技術の開発により、素粒子現象のリアルタイム可視化を実現し、素粒子・宇宙分野での学理的理解を深化させる。また、数理情報処理を組み合わせることで、将来にわたって世界を先導する技術基盤の確立を図る。加えて、その開発技術を異なる分野へ展開し、計測技術における性能指標(機能・感度・解像度・速度)の抜本的な向上を実現する。ミューオンイメージング技術を用いた巨大自然物構造物の計測応用を通じて、今後の実用化・社会実装に向けた可能性を拡げていく。 -
学術変革領域研究(A)(23H04864)
1000T素粒子探索と宇宙磁気プラズマの解明(令和5~9年度)
- 研究代表者
- 東京大学素粒子物理国際研究センター・助教・稲田聡明
超強磁場を用いて、宇宙空間に存在するcatastrophic現象を再現した場合に期待される、暗黒物質や暗黒エネルギーの生成・散乱・崩壊反応、量子化された真空が示す複屈折現象、更に磁化された宇宙プラズマにおける衝撃波やジェットコリメーション、磁気リコネクションなどについて、種々の量子ビームを駆使した最大1000Tの実験を行なう。これにより、素粒子・プラズマといったミクロなレベルでそれらの物理機構を解明し、通常の物質の枠を超えた極限宇宙環境で磁場の果たす役割を明らかにする。
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学術変革領域研究(A)(22H05113)
機械学習による素粒子物理学の革新的な発展(令和4~8年度)
- 研究分担者
- 東京大学素粒子物理国際研究センター・教授・田中純一
素粒子物理学は、理論的考察や実験によって素粒子に働く新しい物理的機構(新物理)を探索することで物質・空間の起源を解明しようとする学問であり、高統計なデータをつかって自然現象を精密に測定することで、成果をあげてきた。 急速に発展した深層学習を、高統計と精密測定を背景にした素粒子物理に自由に応用できるように発展させ、新物理の探索感度を向上させることが本研究の目的である。また、ドメイン知識を深層学習に本格的に取り入れることで、「素粒子物理学+機械学習」という研究スタイルから、機械学習分野そのものへのフィードバックが行えるような研究へと転換を目指す。
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新学術領域研究(領域番号2803)
ヒッグス粒子発見後の素粒子物理学の新展開~LHCによる真空と時空構造の解明(平成28~令和2年度)
- 領域代表者
- 東京大学大学院理学系研究科・教授・浅井祥仁
ヒッグス粒子発見は、①真空は空っぽではなくヒッグス場で満ち、その変化(相転移)で宇宙が進化したこと、②軽いヒッグス粒子の存在はヒッグス粒子の質量の近く、つまりテラスケールに新しい素粒子現象があることの2つを示す証拠となった。本領域では、ヒッグス粒子のみならずヒッグス粒子を超えた「真空、時空、素粒子」の新しいパラダイムを構築するユニークな研究を展開する。
次の3段階構成で研究を推進し、新しい領域を形成する。
(1)LHC加速器を用いて、ヒッグス粒子から期待されるテラスケール領域で新しい素粒子現象を発見する。
(2) ヒッグス粒子や発見された新現象を用いて真空や時空の性質を探り、「真空、時空、素粒子」を融合し、新しいパラダイムを構築する。
(3)パラダイムを検証・発展させるため次世代のエネルギーフロンティア加速器実験の中核となる技術開発を行う。
総括班を中核に3つの研究項目に対し「時空班」「真空班」「重粒子班」を組織し、各段階で密接な連携を維持するとともに領域全体として研究を展開する。 -
新学術領域研究(領域番号2303)
先端加速器LHCが切り拓くテラスケールの素粒子物理学~真空と時空へ新たな挑戦(平成23~27年度)
- 領域代表者
- 東京大学大学院理学系研究科・教授・浅井祥仁
先端加速器LHCでのATLAS実験で「テラスケール(TeV=1012電子ボルトのエネルギースケール)の物理」が直接研究できる。第一の目的としてヒッグス粒子を発見し、「真空」が持つ豊かな構造や質量の起源を解明する。また超対称性や余剰次元の発見から、宇宙の暗黒物質の正体を解明し、「時空」構造の解明を進める。これらの成果は、自発的対称性の破れによる相転移が現在の多様な宇宙の起源であることを実証するものである。更には我々の感覚に直接結びついた「時空」の理解に革命的な変革をもたらす。
第二の目的として、これまで粒子やその相互作用が主な研究対象であった素粒子研究を大きく広げ、従来入れ物であった「時空」や「真空」を探る新たな研究領域を形成する。確実な成果が期待されるLHCでのテラスケール物理成果を核に、エネルギーフロンティア実験の鍵となる加速器・検出器技術の開発や、宇宙、時空、超弦理論などの研究を展開する。 -
特別推進研究(課題番号26000004)
MEG II実験 - 究極感度ミュー粒子稀崩壊探索で大統一理論に迫る(平成26~30年度)
- 研究代表者
- 東京大学素粒子物理国際研究センター・教授・森俊則
本研究グループは、宇宙初期に実現していたと考えられる素粒子と力の大統一(大統一理論)を検証するため、独創的で巧みな実験装置を考案・開発して国際共同実験MEG をスイスのポールシェラー研究所(PSI)で実施し、標準理論では起こりえないミュー粒子の崩壊μ→eγ(ミュー粒子がガンマ線を放出して電子に転換する崩壊:ミューイーガンマ崩壊)をO(10-13)という世界最高の感度で探索してきた。またそれと並行して探索感度の大幅な改善に向けた研究開発を行ない、究極の実験感度を可能とする測定器の改良設計を完成させ、2012年暮れにアップグレード実験MEG IIの提案書をPSIに提出し、2013年1月にPSIの研究委員会によって承認された。
本研究では、MEG実験の残り半分のデータ解析を行なって世界最高感度のμ→eγ探索を続けるのと並行して、プロトタイプによる実証実験を行ない、測定器のアップグレードを完成させる。MEGより更に一桁実験感度を上げた究極のμ→eγ崩壊探索実験MEGIIを実施し、宇宙誕生の謎を解く鍵である大統一理論の検証を目指すものである。 -
特別推進研究(課題番号22000004)
MEG実験 - レプトンフレーバーの破れから大統一理論へ(平成22~26年度 ※最終年度より26000004へ移行)
- 研究代表者
- 東京大学素粒子物理国際研究センター・教授・森俊則
超対称大統一理論の予言する10-13という極微の分岐比までμ→eγ崩壊を徹底探索するため、独創的で巧みな実験装置を新しく考案して、良質な大強度ミュー粒子ビームを持つスイスのポールシェラー研究所(PSI)にMEG実験を提案した。その後スイス・イタリア・ロシア・米国と共同で実験装置を建設し、2008年度より実験を開始した。本研究では、実験感度を順次改善しながらデータを取得・解析して、超対称大統一理論の検証を行なう。また並行して、さらに感度を上げた究極の実験を実現するための開発研究も行なう。本研究においてμ→eγ崩壊が発見されれば、標準理論を超える新しい物理の存在が実証される。さらに分岐比・角分布を測定することにより、超対称大統一理論などのエネルギースケールや対称性について絞り込むことも可能である。ここで得られる結果はLHCにおける発見と相補的であり、双方の結果を合わせて総合的に解析することにより、新しい物理に対する正しい理解が可能となる。
日本学術振興会補助事業(研究拠点形成)
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研究拠点形成事業(A.先端拠点形成型)
ミュー粒子を使ったレプトンフレーバー物理研究のグローバル展開(平成30~令和4年度)
- コーディネータ
- 東京大学素粒子物理国際研究センター・教授・森俊則
スーパーカミオカンデによるニュートリノ振動現象の発見により、ニュートリノの仲間である電子やミュー粒子にも同様の現象が起こることが予想されている。そのような現象は素粒子の「大統一理論」とも密接に関係し、その研究は「レプトンフレーバー物理」と呼ばれ、現在世界的に注目されている。そのレプトンフレーバー物理研究の口火を切ったのが、本事業の拠点機関となる東京大学・素粒子物理国際研究センターの研究グループである。本グループはスイス・PSI が持つ世界最強度のミュー粒子ビームラインにおいて、イタリアと共同開発した独創的な粒子測定器を使って、国際共同研究MEG実験を実施してレプトンフレーバー物理研究を開拓してきた。今後測定器アップグレードにより実験感度を向上させたMEG II実験を開始する。それを追って欧州・日本・米国でMEG II 実験とは異なる角度からレプトンフレーバー物理に迫るMu3e 実験、COMET 実験、Mu2e 実験の準備がそれぞれ進められている。
本事業では、(1)国際共同研究MEG II実験を実施してレプトンフレーバー物理をさらに究め、(2)追随する3実験のグループと研究交流を行ってレプトンフレーバー物理研究のグローバルなネットワークを構築し、相乗効果により研究の飛躍的な発展を図る。さらに、(3)これら最先端の研究現場で若手研究者の育成を行い、次世代のレプトンフレーバー物理研究のアイデアを育んでいく。
日本学術振興会補助事業(人材育成)
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頭脳循環を加速する戦略的国際研究ネットワーク推進プログラム(整理番号R2602)
国際共同LHC・アトラス実験における標準理論を越えた新しい素粒子物理の開拓(平成26~28年度)
- 主担当研究者
- 東京大学素粒子物理国際研究センター・准教授・田中純一
世界最高エネルギーのLHC加速器を用いた国際共同アトラス実験において、世界トップレベルの研究者と先端的な素粒子研究を行なう。その研究を通して、素粒子物理学実験の研究領域の国際研究ネットワークの中で主軸となる日本側研究グループの研究者を育成する環境を構築する。
電弱相互作用のエネルギースケールである数百ギガ電子ボルトまでの領域の現象を正確に記述する素粒子物理の標準理論は平成24年のヒッグス粒子発見で完成した。素粒子の質量の起源の解明のみならず、真空の相転移が存在することを示す重要な発見であった。一方で「暗黒物質の存在」や「エネルギースケールの階層性」等の宇宙の根本的な謎にこの標準理論は答えることができない。これらの謎の解明のため、標準理論を越えた新しい物理現象の発見が不可欠である。
そのため、アトラス実験において、
(1) 暗黒物質の候補を持つ超対称性粒子等の標準理論を越えた物理現象を直接発見すること、
(2) ヒッグス粒子の性質を徹底的に調べることで標準理論とのズレを発見すること
が研究目的である。これらの主要な研究成果に日本側研究グループが主導的な役割を果たすこと、及びその過程の中で次世代、次々世代の国際的リーダーになる若手研究者を育成する環境を構築することが到達目標である。 -
頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣プログラム(整理番号R2207)
エネルギーフロンティアLHC実験での素粒子研究最先端(平成22~24年度)
- 主担当研究者
- 東京大学素粒子物理国際研究センター・教授・小林富雄
エネルギーフロンティア(世界最高エネルギー)加速器LHCを用いて、国際共同実験を行ない、先端的な素粒子研究を進めると同時に、グローバルな視点に立った国際性豊かな若手研究者の育成を目指す。
LHCはTeV(テラ電子ボルト)領域の物理研究が可能な唯一の実験施設であり、世界中から多くの研究者が集まり、最先端の研究を行なっている。このLHCが建設されたCERN(欧州合同原子核研究機構)に、若手研究者を長期派遣し、担当研究者と共に最先端の素粒子研究を主導的に行なうことにより頭脳循環を伴う国際的なネットワークの構築を目指す。
日本学術振興会補助事業(国際的な共同研究等の促進)
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二国間交流事業(ドイツとの共同研究)
新世代光センサーを用いた超高精細シンチレータカロリメータの開発(平成28~29年度)
- 研究代表者
- 東京大学素粒子物理国際研究センター・准教授・大谷航
現在、国際協力のもと進められている国際リニアコライダー(ILC)計画は、電子・陽電子を最高エネルギーで衝突させ生成される粒子を詳細に研究することにより、これまでにない精度で新物理を発見、測定し、真空の構造、質量の起源、宇宙の誕生や進化の仕組みといった極めて根源的な謎を解明することを目指している。ILC計画にはParticle Flow Algorithm(PFA)という設計思想に基づく革新的な超高精度測定器が用いられる予定であり、その心臓部である超高精細シンチレータカロリメータに日本・ドイツがそれぞれ持つ技術を融合し、究極性能の超高精細カロリメータ技術を完成させ、素粒子物理研究の新時代を切り拓くことを目的とする。
スーパーグローバル大学創成支援
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スーパーグローバル大学創成支援に係る戦略的パートナーシップ構築プロジェクト
スイス連邦工科大学チューリッヒ校
- 担当責任者
- 東京大学素粒子物理国際研究センター・教授・森俊則
文部科学省より採択された「東京大学グローバルキャンパスモデルの構築」の主旨に基づき、その活動の中核となるプロジェクトとして、海外の大学との戦略的パートナーシップを活用した教育研究の国際展開を進めている。「戦略的パートナーシップ」とは、通常の大学間学術交流協定を超えた海外大学との関係のことで、双方の強みを活かし、各部局・各分野における研究・教育の交流を束ね、大学と大学との間の緊密で創造的、かつ柔軟で特別な協力関係の実現を目指している。
戦略的パートナーシップを進めるべき相手校(9校)のうち、本センターはスイス連邦工科大学ドメインの自然科学および工学系の研究所であるポールシェラー研究所(PSI)と2003年より共同研究および教員・学生の交流等について協定を結んでいる。最先端の国際共同研究をベースとしたサマープログラムの共同運営等の事業を通じて、質の高い教育プログラムを開発している。Strategic Partnership between the Universities for Research and Education(SPUR)