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物理学専攻 青木助教が第28回(2026年度)高エネルギー物理学奨励賞を受賞

CERN ATLAS地下実験室で検出器の性能向上を目指したアップグレードに携わっていた当時の写真

高エネルギー物理学を担う優秀な若手研究者の学位取得後の研究を奨励するために設けられたこの賞は、その研究者の優れた業績に対して授与するもので、今後さらにステップアップするための登竜門と言えます。
応募対象は、過去3年以内に学位を取得した応募者の学位論文とされており、選考委員会内で厳密な審議が重ねられた後に受賞者3名が確定します。特に、多くの研究者が参加する共同実験に基づく論文は若手研究者自身の寄与が本質的な評価基準となり、コラボレーションの中で主体的に研究し、いかに実力を発揮したかが問われます。
青木助教(大学院理学系研究科物理学専攻 横山・中島研究室 所属)は、大学院生時代に石野研究室の一員としてATLAS実験に参加し、高輝度LHC実験に向けたTGC検出器エレクトロニクスの自立型制御機構の開発に大きく貢献しました。また、データ解析では、第2期運転(2015-18年)で取得された全データ(積分輝度140fb-1)を用い、ミューオンg-2や暗黒物質の問題を説明し得る超対称性理論に着目。これまでLHCで十分に調べられていなかった“スレプトン”が段階的に崩壊するシナリオを研究し、博士論文として纏め上げました。
独創的な解析手法により新たな探索領域を切り拓いた本研究成果は、ATLAS Collaborationの論文としてPhysical Review D 112 (2025) 012005 に掲載され、高い評価を得ました。そして、このたびの第28回(2026年度)高エネルギー物理学奨励賞の受賞にもつながっています。


受賞論文

Search for the Slepton Cascade Decay using Final States with Opposite or Same Sign Three Leptons in the LHC-ATLAS experiment

受賞理由

ミューオンg-2アノマリーと整合する超対称性模型のパラメータ領域を網羅的に調査し、従来のATLAS 解析で十分に探索されていなかった“Slepton-Bino-Higgsino”質量順序で比較的軽いシナリオの重要性を指摘し、3レプトン終状態が最も有効なチャンネルであることを示した。特に同符号3レプトン事象に着目した新規信号領域の導入により感度を大きく向上させた。背景事象評価について、データに基づいた背景推定手法を構築し、未探索であった超対称性シナリオに対して厳しい排除制限を与えた。論文では必要な情報が丁寧に示され、特に導入で理論的背景が議論され動機が鮮明に示されている。
大規模コラボレーション実験の中での成果であるが、本解析は少人数グループとして2022年に立ち上げられ、本人が主解析者および主論文編集者として研究全体を主導した点も高く評価される。そのため本論文は高エネルギー物理学奨励賞に相応しいと判断する。(選考委員会による講評)

感想と今後の抱負

このたびは第28回高エネルギー物理学奨励賞を頂くことができ、大変光栄に思います。本研究を進めるにあたりご指導いただいた先生方、ATLAS実験の共同研究者の皆様をはじめ、多くの方々に支えていただきました。この場を借りて改めて感謝申し上げます。
博士課程では、ミューオンg-2や暗黒物質から動機づけられる超対称性模型に着目し、LHC-ATLAS実験のデータを用いたスレプトン探索に取り組みました。
特に、これまで十分に探索されていなかったスレプトンの崩壊過程に対し、3つのレプトンを持つ終状態、なかでも3つすべてが同じ電荷を持つ特徴的な事象を利用した新しい探索を行いました。信号領域の設計から背景事象の推定、系統誤差の評価、統計解析まで一貫して取り組み、新たな質量領域に実験的な制限を与えることができました。この研究を評価していただけたことを大変うれしく思います。
現在はHyper-Kamiokande実験に参加し、検出器建設やエレクトロニクスの開発とともに、陽子崩壊をはじめとする物理解析にも取り組んでいます。LHCとは異なるアプローチから標準模型を超える物理に挑戦できることを楽しみながら、これまで培ってきた装置開発とデータ解析の経験を生かし、実験の立ち上げから将来の物理成果まで幅広く貢献していきたいと考えています。

関連リンク

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