( 2026年9月17日に発表されたCERNの記事をもとに、新たに日本語版として書き直したものを掲載いたします。)
― ATLASとCMS測定器の両側に設置されたビーム収束電磁石の解体が始まりました。これは高輝度LHCに向けた大きな一歩となります。―
周長27kmのLHCトンネルには、さまざまな種類(双極、四極、六極、八極、十極、等)の電磁石、数千台が設置されており、それぞれが特定の役割を担っています。検出器前後に設置される最終収束磁石は、3台1組の四極磁石でありであることから「インナートリプレット」と呼ばれ、検出器の中心でビームを強く収束させます。粒子の衝突確率を高めるためにビームをできる限り細く絞り込み、単位時間あたりの粒子衝突回数を増やすことで取得するデータ量を増加させます(ルミノシティを高くすることに相当する)。
2030年開始の高輝度LHCに向けて、最終収束磁石を含む電磁石群を新しいものに置き換えますが、この大規模な作業は第3期長期シャットダウン(LS3)において最も重要な更新作業です。今週、磁石接続部を切断する最初の作業が行われ、CERN所長のMark Thomson氏がLHCポイント1(ATLAS実験)を訪れ、作業開始を見届けました。
「現在の磁石を新しい最終収束磁石に置き換えることは、今後の高輝度運転にとって極めて重要です。最初の四極磁石は、2029年初頭に到着する予定です。ATLAS・CMSの両側にそれぞれ4基ずつ、合計で16基の極低温容器を設置します。それぞれのその中には7種類の極低温モジュール群(Q1磁石, Q2A磁石, Q2B磁石, Q3磁石, 補正磁石パッケージ, D1磁石, Crab Cavitiesに相当)が設置される予定です。」
新しい最終収束磁石は長年にわたる研究開発の成果であり、現在LHCに設置されているニオブ・チタン超伝導磁石と比べて、性能が大きく向上しています。ニオブ・スズ超伝導磁石を採用することで、現行の超伝導磁石よりも約40%強い、11.3テスラの磁場を発生させられます。これらの新しい磁石は、ATLASおよびCMS実験の両側に設置されます。一方、ALICE・LHCb両実験では、ルミノシティの大幅な向上を必要としないため、現在の最終収束磁石を引き続き使用します。但し、両実験ともルミノシティ向上の恩恵を受けられるよう、改良が施される予定です。
9月7日以降、作業チームはATLASとCMS実験の両側にあたる区間を解体しており、28台の超伝導磁石(最終収束系を含む)の取り外し作業に向けて準備を進めています。
右から3番目は高輝度LHCプロジェクトリーダーのMarkus Zerlauth氏、左から3番目はLS3調整チーム責任者のJean-Philippe Tock氏
「今日の出来事はCERNにとって、そして特に高輝度LHCプロジェクトチームにとって大きな節目です。現行の最終収束磁石はLHC建設時の2005年から2007年にかけて設置されました。約20年間の運転を経て、これらはさらに強力な新世代の磁石に道を譲ります。技術の世代交代がなされる瞬間を目の当たりにできることは、本当に素晴らしいことです。」
関連リンク
CERN TOPIC: Accelerators(17 September, 2026): The disconnection of the LHC has begun (原文)