ボトムクォークから発生した2つのジェットボソンは水色の円錐で、2つの光子は黄色いタワーで表している。
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本結果は、300インバース フェムトバーン超(約3京回の衝突)に相当する陽子・陽子衝突データから得られたものです。
現代の素粒子物理学において、ヒッグス粒子がどのように自己相互作用するかは、最大の未解決課題の一つです。この「自己結合」は、初期宇宙の進化や素粒子に質量を与えるメカニズムを解明する手がかりとなる可能性があります。この根源的な相互作用を明らかにするために、ATLASコラボレーションはヒッグス粒子対生成の「ゴールデン」崩壊チャンネルの一つ、すなわち、一方のヒッグス粒子が2つの光子にもう一方がボトムクォーク対に崩壊するモードを研究しました。
LHC実験のRun2(2015-2018年)の全データと、Run3の一部データ(2022-2024年)を組み合わせることで、ATLASのチームはこの崩壊チャンネルの解析における統計精度を大幅に向上させました。Physics Letters B 誌で発表されたこの成果は、300インバース フェムトバーン(fb-1)を超える陽子・陽子衝突データに基づくATLAS実験初の観測結果であり、1インバース フェムトバーンは約100兆回の衝突に相当します。
ヒッグス粒子対生成は、1兆回の陽子・陽子衝突につき1回しか起こらないと予測されるほど極めて稀な現象であり、またこの崩壊モードを模倣する標準模型プロセスからのバックグラウンドが著しいため、この崩壊チャンネルの研究は極めて困難になります。これらの課題を克服するため、ATLASの研究者たちは、機械学習などの高度なデータ解析技術を導入し、バックグラウンド事象から崩壊シグナルの分離を行いました。
こうした技術的な進歩とRun3データセットの一部追加により、ATLASの研究者たちは、シグナル強度(観測されたシグナルを標準模型の予測で割った値)および2つの主要な相互作用のパラメータに対して、これまでで最も厳しい制限を与えました。具体的には、標準模型の予測値で規格化したヒッグス粒子の自己結合の大きさを-1.6から6.6の範囲に、2つのヒッグス粒子と2つのベクタ―ボソン(WまたはZ)の相互作用の大きさを-0.5から2.6の範囲に制限しました。
この結果は、ゴールデン崩壊チャンネルにおけるヒッグス粒子対生成プロセスの研究性能の向上を表しています。また、ビッグバン直後の宇宙の進化を理解するうえで重要な鍵となる、ヒッグス粒子の自己結合定数の将来的な観測に向けた基盤の構築になっています。まもなくRun3の全データが利用可能となり、高輝度LHCの実現が視野に入るなか、ATLAS実験はこれらの研究をさらに加速するうえで優位的な立場にあり、ヒッグス粒子への理解をさらに深め、標準模型を超えた物理の兆候を探究していくことになります。
関連リンク
CERN News Topic: Physics(22 April, 2026): ATLAS sets record limits on Higgs boson’s self-interaction (原文)