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LHCとしてのファイナル・ラップスタート

(CERNのタイムリーなトピックスを厳選し、日本語訳でお届けいたします。)

LHCの最終年度の物理実験が幕を開けました。各実験は6月末まで衝突データを記録し、その後、加速器を改造して高輝度化するための作業期間(第三期長期シャットダウン)に入ります。

LHCとしてのファイナル・ラップ:
CERNの加速器は、冬季運転停止期間を終え、2026年の運転に向けたスタートを切りました。2026年は大型ハドロン衝突型加速器(LHC)としての最終年度となります。6月末には、LHCとしての運転を完了し、LHCを高輝度LHC(High-Luminosity LHC)として改造するための4年間の作業期間に入ります。
3月7日(土)15時58分、LHC実験が記録した、今年最初の陽子衝突イベントに注目してください。2015年のRun2開始時に13 TeVにエネルギーを増強した後の11年にわたる高エネルギー運転を経て、LHCチームは非常に高い専門性を獲得し安定した運転を実現してきました。そのため、地下100mに位置し、27㎞の周長を持つLHC加速器の複雑さを忘れがちになります。9,000台以上の超伝導磁石、数千の電気回路、数十万の機器を備え、世界最大の極低温システムを駆使して、LHCはマイナス271℃で稼働しています。
「従来の冬季運転停止後のLHCの再稼働に要した時間に比べ、今回は記録的な速さで準備を完了し再稼働を果たしました。」と、LHC運用責任者のMatteo Solfaroli Camillocci氏は語りました。「チームはLHC加速器を深く理解しており、その作業は驚くべきほど繊細に行われています。これは真のチームワークによる成果であり、私たちは皆、最後の数ヶ月の運転を楽しみにしています。」

2026年のLHC試験開始時のATLAS実験における粒子衝突イベント事象

今後4ケ月にわたる運転では、いくつかの種類の衝突実験が予定されており、まず9週間の陽子衝突実験から始まり、その後3週間の鉛イオンの衝突実験が行われます。そして、2026年の運転は高強度陽子ビームを用いた2週間の試験で締め括られます。
標準的なLHCビームより40%多い陽子を含むビームバンチを周回させて、加速器への影響を検証します。昨秋に実施した試験に続き、High-Luminosity LHCの通常運転の一部となる高強度ビームの挙動を研究し、長期シャットダウン開始前に可能な限り問題の洗い出しを行い、長期シャットダウン中に改善可能な潜在的な問題をあぶり出す目的です。ただし、現在の加速器や実験装置は高い負荷に対応できないため、このような高強度バンチを周回させる場合は、バンチ数に制限があります。
6月29日は、4年間にわたる大規模改修を開始する日となります。LHCの一部、特に衝突点前後に位置する最終収束やステアリングのための磁石群は解体され、現在生産中の革新的な装置に置き換えられます。2030年に稼働するHigh-Luminosity LHCは、現行のLHCよりもはるかに高い輝度での運転を実現し衝突レートを大幅に高め、物理学者がヒッグス粒子などのメカニズムをより詳細に研究することや、非常に稀な新現象を発見することを可能にします。

関連リンク

CERN News Topic: Accelerators(7 March, 2026): Final laps at the LHC (原文)