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ATLAS Thesis Award、ICEPP大学院生が2年連続で受賞
石野研出身(現 物理学専攻助教)青木匠氏が授賞式に出席

ATLAS Thesis Awards 2025授賞式

2020年4月に東京大学大学院理学系研究科物理学専攻(素粒子物理国際研究センター 石野研究室)に進学し、2025年3月に博士学位を取得した青木匠氏(現 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻横山・中島研究室 助教)が、ICEPPでは2年連続となる“ATLAS Thesis Award”受賞の快挙を成し遂げました。
ATLAS実験公式ホームページに掲載された受賞ニュース記事の和訳版をご紹介いたします。

2026年2月19日、ATLASコラボレーションはCERNメイン講堂に集まり、ATLAS Thesis Award 2025の授賞式を開催しました。これはATLAS実験における博士課程大学院生の重要な役割を称える年中行事です。

ATLASコラボレーションの博士課程大学院生は学位取得を遂げながら、物理解析や検出器運用からソフトウェア開発・アップグレード作業に至るまで、共同研究の科学的使命に決定的な貢献を果たしています。今年のATLAS Thesis Awardは200以上の研究テーマから選ばれ、共同研究の規模の大きさと学生らの研究領域の広さの両方を映し出していました。選考委員会はこのなかから申請のあった36件を審査し、8名の受賞者を選出しました。今年の受賞者は、東京大学の青木匠氏、ドイツ・フライブルク大学のKartik Deepak Bhide氏、スペイン・バレンシア大学のAntonio Jesus Gomez Delegido氏、英国・オックスフォード大学のSimon Florian Koch氏、 イタリア・ミラノ大学のElena Mazzeo氏、米国・カリフォルニア大学バークレー校およびローレンス・バークレー国立研究所のRyan Roberts氏、オランダ・アムステルダム大学のStephen Nicholas Swatman氏、英国・グラスゴー大学およびラザフォード・アップルトン研究所のElliot Watton氏でした。
「学生はATLASの協働の“魂”です。」と、ATLAS論文賞選考委員会委員長 Jean-Francois Arguin氏は述べました。「彼らはATLAS論文共著者の3分の1を占め、ATLASが最先端の科学研究として進化し続けるための多くの重要な研究を遂行しています。今年の選考候補者の研究の質と領域の幅広さは、委員会の審査を極めて困難なものにしました。全候補者の卓越した業績を心から称賛いたします。」

ATLAS Thesis Awards 2025 プレゼンテーション
授賞式に参加したコラボレーションメンバーの前で、自身の博士論文を解説する青木助教

授賞式では、各受賞者が学生時代のハイライトを披露し、解析内容や運用上の貢献の一部を紹介するとともに、その過程で直面した課題を共有しました。例年通り、プレゼンテーションでは指導教員や同僚・友人・家族といった自身を支えてくださった方々への感謝の意が表されました。
ATLAS Thesis Awardは今回で第16回を数え、2010年の創設以来、この賞は学生たちの視点を通じて実験の進展を記録し続けてきました。そして、受賞者のなかには、その後、重要な指導的立場に就いた者が何人もいます。
最後に、Arguin氏は次のように締めくくりました。「多くの点で、我々の共同研究の未来は学生たちの論文に表れています。これらは今後数年間にわたって、我々を導く新たなアイデア、エネルギー、リーダーシップとなっていくでしょう。選考委員会の代表として、“素粒子物理学の未来”は“彼らの有能な手”のなかにあると自信を持って断言できます。」


感想と今後の抱負

このたびは、ATLAS Thesis Awardという大変名誉ある賞を頂き、大変光栄に思っています。
本研究では、ミューオンg-2アノマリーに動機づけられた超対称性粒子探索をテーマとし、これまで十分に探索されてこなかった質量階層に着目した新たな探索手法を提案・実装しました。
解析の立案から論文執筆に至るまで主体的に取り組むことができたのは、石野教授をはじめ、ICEPPおよびATLASコラボレーションの多くの方々のご指導とご支援のおかげです。心より感謝いたします。
今後はハイパーカミオカンデ実験において検出器の建設から立ち上げに関わり、これまでのATLAS実験で培った経験を活かして素粒子物理分野の発展に貢献していきたいと考えています。

指導教員からのメッセージ

世界中から多くの優秀な研究者が集まって協力と競争をしながら最先端の科学を切り拓いているATLAS実験の最前線で、青木は常に優れた成果を出し続けてきました。今回のATLAS Thesis Award(2025)も、もらうべくしてもらった賞かなと思います。青木の大学院入学時、果たしてコイツのポテンシャルを存分に引き出せるだけの良い研究テーマを指導教員として準備できるのだろうか? と不安に思ったこともありましたが、蓋をあけてみれば、本人が自分のやりたい研究に必要なリソースを自ら考え、次々と準備・実行していたので、心配して損した。なんなら、研究室の仲間への様々なフィードバックを通じて、研究室の実力を数段上にあげてくれたと思います。半年間の企業研修(?)の後、「やっぱり物理が面白い、物理やりたいなー」ということで、この世界に戻ってきたのを嬉しく思っています。

青木の更なる活躍を期待しつつ、『やっぱり物理が面白い、物理やりたいなー』と、次々と優秀な若者が飛び込んでくるような未来を、一緒に作っていきたいと思います。