センター長挨拶

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「サイエンス百年の計」で真理と未来への扉を開く

東京大学素粒子物理国際研究センター長 浅井祥仁

素粒子物理学は、物質や宇宙の成り立ちに迫る基礎科学です。小さな粒子を見るには大型の高エネルギー加速器が必要で、そのため実験プロジェクトは大型化しています。こうした研究に対し、「社会の役に立つのか」と質問を寄せられます。多大な社会資源をつぎ込んで、どんな果実を社会にもたらすのか、と問われているのでしょう。

この質問に、私はこう答えるようにしています。

5年や10年の短期間で、すぐに社会に役立つ何かをもたらすことはできません。ただ、私たちが取り組んでいるのは、「自分を取り巻く世界を知りたい」という人間の知的欲求を満たすための研究です。その価値を、どうかご理解いただきたい。

また、すぐには役立たないこの研究も、歴史を振り返れば、産業の基盤を成し、社会に大きな恩恵をもたらしています。物質の根源を探る研究から、電子の存在が100年前に明らかになり、エレクトロニクス(電子工学)産業が発展しました。X線や重粒子は医療で当たり前のように使われています。現代社会のインフラとなったインターネットのウェブ技術も、素粒子研究の総本山と言えるCERNで開発されたツールです。

大規模物理実験は、研究開発中の先端技術を導入するモデルケースにもなっています。基礎科学の研究から新たな技術が生まれ、基礎科学の発展のために、最先端の技術が積極的に導入される。素粒子物理学は、基礎科学であると同時に、「総合科学」であると言えます。

とはいえ、私たちがいま取り組む研究が、生活に役立つようになるには50年、100年の時間が必要になるかもしれません。言うなれば基礎科学は、未来世代に向けた長期の投資です。「サイエンス百年の計」で、基礎科学へのご理解とご支援をいただけますと幸いです。

とかく基礎科学の分野では、先人たちが積み上げてきた蓄積が大きな意味を持ちます。2017年4月のセンター長就任以来、その蓄積を受け継ぎ、次代に受け渡すべく、これまでのセンターの歩みを踏まえて前に進んでいく所存です。

次代を担うのは、これから研究を始める学生のみなさんです。物理学の新時代を切り拓くべく、意欲と好奇心に満ちた学生の挑戦を歓迎します。「サイエンス百年の計」は、若き研究者の未来のためにも大きな意味を持つのです。