A04班進行状況報告

素粒子模型構築へのLHC実験のインパクト

超対称模型は標準模型を越える物理のもっとも有力な候補であり、LHC実験では、この超対称粒子を多数生成してその性質を研究することが可能である。今年度でLHC実験における超対称模型のシグナルのパターンを調べるとともに、解析方法を工夫して、理論の基本的なパラメーターを測定する方法について研究した。

(1)超対称模型では、スカラー超対称粒子の相互作用は、その標準模型の粒子のパートナーのカイラルな構造を引き継ぐため、超対称粒子の崩壊パターンには荷電非対称性ももっている。この荷電非対称性をLHC実験の崩壊分布を測定することによって、確立することができることを明らかにした。また、電子の分布とミューオンの分布の比較によって、スカラーミューオンの右巻き・左巻き混合をあきらかにできることを示した。

(2)超対称標準模型の粒子と、重力の超対称粒子であるグラビテイーノ粒子の質量の関係は、宇宙論的にも、超対称模型の識別のためにも重要な意味を持っている。グラビテイーノが一番軽い超対称粒子の場合、標準模型の超対称粒子は準安定で、この粒子の寿命を測定することは、宇宙論的にも、超対称模型の決定のためにも重要である。我々は、この粒子の寿命を広いパラメーター領域にわたって測定するために外部測定器を導入することを提案した。この測定器はLHCのCMS実験の測定器の外部に、主な実験の変更をおこなわずに追加することが可能であることを発見し、現在さらに、3体崩壊に対する制限や、質量の測定について研究を行っている。

(3)超対称粒子の質量の決定については従来超対称粒子の分布の終点を実験的に測定することによって、質量を決定することが提案されていたが、このような方法では、いくつかの崩壊が共存する場合、統計が少ない場合などに、問題が生じていた。我々はそれぞれの崩壊じしょうのKinematics を厳密に取り扱うことによって、この問題を解決し、超対称粒子の質量決定の新しい方法を提案した。

(4)O(10)GeV程度の電子ビームは暗黒物質と衝突することによって、スカラー電子を生成する可能性が、この機構を利用した、暗黒物質の探索の可能性や、この実験を行うために必要なスカラー電子質量の決定の可能性について考察し、論文として発表した。

(5)超対称模型は高次元の模型に広げることでMSSMとはことなる様相を示す可能性が指摘されている。このような模型の一つであるデラックゲージーノ質量項がある場合について、現象論的な研究を京都大学学生の竹内と行った。LHCではスカラークオークの対生成過程があり、この大きさはマヨラナ質量に比例するため、この過程の散乱断面積を測定することでゲージーノの質量のマヨラナ、ディラック性について調べるkとおができる。散乱断面積の特性について定量的な研究をおこない論文にまとめつつある。(論文準備中)

(6)KKLT模型のような縮退した超対称模型における現象論について研究をおこなった。このような模型では、標準模型のBGの理解がより重要になることがあきらかになった。この研究については論文にまとめつつある。(論文準備中)


本ページに関する問い合わせ先:東大素粒子センター・坂本 宏sakamoto@icepp.s.u-tokyo.ac.jp

2006年6月23日更新