量子研究サマーキャンプ共同研究

東京大学素粒子物理国際研究センター令和7年度
「ICEPP量子研究サマーキャンプ」公募要領
1. 概要
東京大学量子イニシアティブ構想では、世界に先駆けて量子コンピュータの社会実装を実現するため、産官学の連携による量子コンピュータの研究開発と利活用に向けたアプリケーション開発、量子人材育成を進めている。素粒子物理国際研究センター(ICEPP)の量子研究サマーキャンプは、量子人材の発掘と将来のキャリア開拓を目指し、経済的な支援のもと、早期の段階から先端量子技術の研究に取り組む機会を提供する。
サマーキャンプ参加者は、量子アルゴリズム・ソフトウェアもしくは量子技術を用いたハードウェア開発のいずれかのテーマに沿って、2カ月の間、集中して研究活動に従事し、東京大学量子イニシアティブ構想の発展に資するような水準の成果を生むことを目指す。具体的な研究内容と期間終了時の達成目標をキャンプ開始時に設定し、成果物の提出をもってキャンプ終了とする。
2. 内容
以下の3つの大きなテーマのいずれかに沿って、ICEPP教員による指導のもとで具体的な研究内容を定め、専念して取り組む。
①誤り耐性量子計算における量子リソースの見積もり
量子回路上に実現された量子状態から、物理量の期待値を抽出するために必要な量子アルゴリズムの設計とリソース見積もりを行う。特に、量子振幅推定アルゴリズムにおいて、量子エラー抑制・符号距離の延長によってノイズの影響を取り除くための方法を吟味する。最終的には、魔法状態の消費量などから、必要となる超伝導量子コンピュータのサイズ・実行時間を見積もる。
以下のような内容で論文につながる成果を目指す。
●ダイナミクスにより生成される量子状態の期待値推定に関するend-to-endのリソース見積もり結果(表面符号)・魔法状態の消費量の算出(物性物理と素粒子物理の模型を主なターゲットに想定)
●ノイズと物理量子ビット数のトレードオフ関係
②場の量子論のシミュレーション
量子コンピュータ上で場の量子論のシミュレーションをするための理論的基盤、アルゴリズム、ソフトウェア・ツールなどの研究開発を行う。例として以下のような内容が考えられる。
●量子コンピュータ実機を用いた大規模系のダイナミクスシミュレーション
●場の量子論のハミルトニアンを、量子コンピュータやテンソルネットワークでの数値計算に適した表現に変換するソフトウェア・ライブラリの開発
※オリジナルな研究で論文につながる成果を目指す。
③ジョセフソン接合を利用した超伝導量子デバイスの開発
各種量子ビット(flux/phase/charge qubits)、量子限界アンプ、低温RFスイッチ、SQUID磁束計やSISミキサー等の検出器、シャピロステップによる電圧標準など、ジョセフソン接合を利用した基本的な超伝導量子デバイスを設計・製作し、冷凍機環境下でDC及びAC測定を行う。なお、サンプルの製作・計測はICEPP教員が支援する。
キャンプ終了時に以下の項目の提出が要求され、さらに、会議・研究会での発表につながる成果を目指す。
●作製したデバイスのgdsファイル
●作製したデバイスの性能の定量的見積もり(手計算または有限要素法による数値解析結果など)
●作製したデバイスのプロセスフロー(微細加工における使用デバイス及びそのパラメータをまとめた書類)
●新規量子デバイスの測定結果(PPMSで測定した超伝導薄膜のDC測定結果、希釈冷凍機での超低温RF測定における性能評価など)
3. 期間
令和7年8月1日から9月30日まで(休・祝日、ICEPPの夏休み期間は除く)
合計160時間以上とする。ただし、1週間あたりの労働時間が40時間、1日あたりの労働時間が8時間を超えないものとする。
4. 場所
東京大学(本郷キャンパス)理学部1号館西棟10階 素粒子物理国際研究センター(ICEPP)
基本的に対面で実施する。ただし、事情によってオンラインでの参加を認める場合もある。
5. 対象
学部生(東大以外の大学からの参加も可)。ただし、謝金を受け取ることが可能な方に限る。
また、東京近郊以外から参加を希望する者には、謝金・旅費について個別に相談を行う。
研究テーマ③を希望する方は、以下の条件を満たす必要がある。
●Pythonによるデータ処理プログラミングの経験を持っていること。
●基本的な電子工作やオシロスコープ等の計測器の使用経験があること。
※上記以外の特殊な作業(クリーンルームでの微細加工など)は、ICEPP教員が支援する。
6. 謝金
1時間あたり3,000円
7. 募集人数
①、②、③それぞれ数名程度
8. 応募方法
参加申請フォームからエントリーし、希望テーマに沿った審査課題に回答する。審査課題と回答方法は、エントリーシートが受理され次第、電子メールで送付される。課題への回答をもって応募完了とし、その回答まで含めた応募締切は令和7年6月30日(月)厳守。
9. 審査
エントリーシートの内容と審査課題への回答をもとに書類審査をする。必要に応じて面接をお願いする場合がある(面接が必要な場合は個別連絡)。審査結果は原則7月中旬までに全応募者に通知を行う。
量子研究サマーキャンプに関することは、下記にお問い合わせください。
東京大学素粒子物理国際研究センター 寺師弘二
TEL:03-3815-8384 / FAX:03-3814-8806
terashi@icepp.s.u-tokyo.ac.jp