INTERVIEW

素粒子と重力の両方の研究をしたいそれがICEPPを選んだ理由でした #ATLAS実験

近藤 翔太(こんどう しょうた)ATLAS実験(奥村研究室)博士課程2年

CERNではどのような経験をされましたか?

1カ月前にスイスのCERN(欧州合同原子核研究機構)から半年ぶりに戻ってきたばかりですが、またすぐに向こうに行きます。帰って来るのは8カ月後です。最初にCERNに行ったのは、2023年で修士1年のとき。「CERNサマースチューデントプログラム」というCERN主催の夏の学校で、世界中から集まった学生がそれぞれ研究室に所属し、指導教員から与えられた研究課題に取り組みます。当時、不安よりも、挑戦できる喜びのほうが勝っていたような気がします。
ただ、一番困ったのは英語でした。指導教員の先生がイギリスの方で、話すスピードがものすごく速くて、最初は何を言っているのか全然わかりませんでした。私のほうも、自分の考えを英語で伝えることがなかなかできなくて……。このときは研究についていくだけで精一杯でしたが、いろいろな国の人と交流して、考え方や文化の違いを感じられたことは、とても大きな収穫だったと思います。

海外での研究生活は大変ですか?

その後、CERN出張の際は、ジュネーブの近くにあるフランスの町に住んでいます。コンビニもない、自販機もない、日曜はスーパーはお休みという、とても静かな田舎町です。オフィスは歩いて15分のところにあるので、毎朝7時に家を出て、ミーティングに参加して、その後オフィスで研究をして、夜7時ぐらいに帰宅して、ご飯を作って、シャワーを浴びて寝る、みたいな感じです。食事は自炊で、基本は日本食です。一度、スープもダシと醤油でこしらえて、ラーメンをゼロから作りました。美味しくなかったです(笑)。そんな暮らしぶりですが、CERNでの研究生活はとても楽しいです。

物理に興味を持ったきっかけは?

私は小さい頃から星が好きでした。小学校4年生ぐらいのとき、友だちが自由研究で木星のことを調べて、大きな模造紙に書いて発表していたんです。それを見て感動して、星のことを調べてみたら、宇宙には素粒子というのがあって、それがどんな物理法則に支配されているかわかれば、宇宙のことがよくわかると本に書いてありました。じゃあ、その物理というものをやろうと心に決めて、気づいたら、ここまで来てしまったという感じですね。
それからもう一つ、2015年にノーベル物理学賞を受賞された東大の梶田隆章先生が、私が卒業した埼玉県立川越高校の大先輩なんです。梶田先生がニュートリノについてお話しするのをたまたま聞いて、それが入学した横浜国立大学でニュートリノの研究室を選んだきっかけになりました。

ICEPPを進学先に選んだ理由を教えてください。

卒業後は大学院に入って研究者になろうと決めていたので、環境の整っている東大を目指しました。当初は重力波の研究室に行きたかったので、ICEPPは候補に入ってなかったのですが、今の指導教員の奥村恭幸先生の講演を聴く機会があり、それで心が変わりました。そのとき奥村先生がお話しされていたのは、縦・横・高さの3つの方向に加えて、余剰次元と呼ばれる私たちが知らない新しい方向があるかもしれないということでした。余剰次元は他の3つの方向と違って無限に広がっているわけではなく、小さい距離しか広がっていません。よって私たちがそれを感じ取ることはできませんが、もし余剰次元が存在すれば、CERNのLHC(大型ハドロン衝突型加速器)でグラビトン(重力子)という重力を媒介する粒子が見つかるはずです。素粒子理論と重力理論を統合するのは非常に難しく、別々に研究する必要があると当時は思っていたので、そのお話を聞いて、自分の中の常識がひっくり返されました。もともと自分が興味を持っていた素粒子と、興味を持ち始めたばかりの重力の両方の研究がICEPPに行けばできるんだと思い、第一志望を変えました。あのときはものすごくワクワクしました。ですから、合格したときはとても嬉しかったし、これでやりたい研究ができるんだと、なんか安心した記憶があります。

今後の展望を教えてください。

博士課程の現在は、ATLAS実験で集めたデータを解析する仕事をしています。そのデータにどのような処理、工夫をしたら、いま私が探しているヒグシーノという超対称性粒子が見つかりやすくなるのかを考えながら解析をしています。誰も見たことのないヒグシーノを発見するという目指すべきものがあるので、研究はとてもやりがいがあります。それにICEPPの人たちがみんな楽しそうに生き生きとして頑張っている姿を見るのは大きなモチベーションになります。ICEPPって、雰囲気が明るいんです。
ICEPPの卒業後は、アカデミアに残ったとしても、あるいは企業に行ったとしても、研究は続けるつもりです。とにかく楽しいです。

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