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INTERVIEW

憧れの地CERNで、成長のきっかけをつかむ2018.06

小玉 昂史(こだま たかふみ)ATLAS実験(石野研究室)修士課程2年

どのような研究に取り組まれていますか?

ATLAS日本グループの一員として、超対称性粒子や暗黒物質(ダークマター)候補の素粒子など、新物理の証拠となる新粒子の発見に挑んでいます。CERNのLHCでは、陽子どうしを毎秒大量に衝突させ、さまざまな事象を発生させています。ATLAS検出器はそのなかから新物理につながりそうな事象を検出・蓄積し、コンピュータで解析します。

そのなかで、私は大きく2つの研究に取り組んでいます。ひとつは、現在行なわれているLHCの第二期運転(Run2)において、ミューオン(μ粒子)検出器である「シンギャップチェンバー」と、高エネルギー粒子検出器である「カロリメータ」を組み合わせた、新たなトリガーシステムの運用に向けた研究です。

トリガー(引き金)とは、毎秒約20億にも及ぶ陽子どうしの膨大な衝突事象のなかから、見たい事象を見つけ出すための仕組みです。検出器の性能やコンピュータリソースには限界があり、すべての事象を記録することはできません。探索対象の事象でよく生成されるミューオンや高エネルギー粒子を手掛かりに、事象を記録するかどうかを判定します。

もうひとつのミューオン検出器、「MDT(Monitored Drift Tube:精密飛跡測定用検出器)」のアップグレードに向けた研究にも取り組んでいます。CERNのLHCでは、当初デザインしていた衝突頻度の数倍に及ぶ高感度測定を目指す「高輝度LHC」の計画が進められています。そのために2024年からLHCを長期シャットダウンし、性能改善作業が行なわれます。私はこのアップグレードに合わせ、MDTの新しい「飛跡再構成システム」の性能評価と改善作業に携わっています。

毎年開催しているオープンキャンパスで、高校生に素粒子物理学実験の魅力を伝える。

修士課程の1年間を終え、研究生活でいちばん印象に残っていることをお聞かせください。

修士1年の夏、スイス・ジュネーブのCERNに1ヶ月滞在して研究に取り組んだことです。CERNには、高校生の頃から憧れを抱いていました。理学部物理学科に進んだのも、高校生の時に読んだCERNのLHCに関する本がきっかけです。その時点で大学院進学も考えていて、研究するならCERNのLHCに関われる分野に進みたいと、素粒子物理学実験の道を選びました。それだけに、憧れの地CERNで実際に研究に取り組めたことは非常に感慨深い体験でした。

また、CERNでの滞在は、私にとって初めての海外経験でもありました。日本とは異なる生活や環境に戸惑うこともありましたが、現地の人々やATLAS日本グループのメンバーとコミュニケーションをとることで自分の視野が広がりました。今後研究を進めていくうえで、大きな刺激になったと感じています。

大学院に進学されて、ご自身の変化や成長をどう感じておられますか?

小中高校と大学の学部までは学問を「勉強する」場でしたが、大学院は学問を深く「研究する」場だと実感しています。私も最初はそのギャップに戸惑いましたが、研究に取り組むうち、それまでとは違う学問の本当の面白さが見えてくると思います。

ICEPP(本センターの略称)には、CERNへの憧れと、素粒子物理学実験に携わりたい一心で進学しました。先生方や諸先輩方は、世界の素粒子物理学実験の最前線で活躍されています。私自身もそのメンバーの一員であるというプレッシャーを感じながら、一日でも早く世界の最前線に追いつけるよう日々研究に励んでいます。

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