W粒子の質量を 0.05% の精度で測定


下の図は、電子と陽電子の衝突から2つのW粒子が生成され、それが合計4つのクォークに崩壊したところをOPAL測定器で捕らえたものです。OPAL測定器は、クォークやレプトンのエネルギーと運動量を正確に測定することができます。
WW topology

観測されたクォークやレプトンのエネルギーと運動量から、W粒子の質量を決めることができます。 この方法により、LEP2実験ではW粒子の質量を世界最高の感度で直接測定することができます。
Mw change
上の図は、このような方法によりLEP2で測定したW粒子の重さの誤差が各年でどう変化したかを表しています。 LEP2開始当初 0.25%だった測定誤差は、LEP2の運転を終了した2000年末には0.05%にまで精度を上げていることがわかります。

一方、LEP1においてW粒子は直接生成されませんが、標準模型の他のパラメータの精密測定と標準模型の関係式から、間接的にW粒子の質量を予測することができます。 このLEP1におけるW粒子の質量の間接測定と、LEP2における直接測定を比べることで、標準模型の関係がどこまで正確に成り立っているかを検証することができます。 また、LEP1におけるトップクォークの質量の間接測定と、陽子・反陽子加速器によるトップクォークの質量の直接測定でも同様の検証が可能です。

下の図は、W粒子とトップクォークの質量の間接測定と直接測定の関係を表しています。
赤色の実線で示された部分が、間接測定によるW粒子とトップクォークの質量領域を表しています。 緑色の点線で示された部分が、直接測定を表しています。 図からわかるように、2つの領域には重なりがあり、LEP2による精密測定においても、まだ標準模型は矛盾なく成り立っていることがわかります。

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