ATF / ATF2 |
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ILCの最終収束系には、次の二点が必要である。
KEKの先進加速器試験装置 (ATF) を拡張し、最終収束系システムを実証するための研究施設 (ATF2) を建設してきた。 ILCで採用される局所色収差補正を基礎とした収束原理の実証を初めて行なう実験で、ILCのScaled down modelとして2008年の終りからビームコミッショニングを進めている。 プロジェクトでは目標を二段階に分けて設定している。 初期の目標は、1010個の電子を縦37nmの非常に狭い空間に閉じこめ、極微のビームサイズを実現することである。 また、このビームの軌道を2nmの精度で制御できることを実証するのが、次期の目標である。 小さなビームサイズと、精密なビーム軌道制御が可能となれば、電子と陽電子を高い頻度で衝突させることを保証できる。 現在は、このような非常に小さい電子ビームの大きさや軌道を正確に求めるためのモニタの開発や、軌道を一定に保つためのフィードバックシステムの研究を進めている。 ATF2は日本が主導する計画だが、アメリカやアジア、ヨーロッパの多数の国々が参加した国際共同研究として進めている。 |
![]() ATF / ATF2ビームライン |
新竹モニタ |
ATF2の仮想衝突点において縦方向に37nmに収束した極小のビームを測定するビームサイズモニタとして,新竹モニタと呼ばれる測定器を研究開発している. 新竹モニタは,電子ビームに直交する平面上にレーザー干渉縞を作り,干渉縞プローブとしてビームをスキャンすることでビームサイズを測定するビームサイズモニタである |
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干渉縞上で磁場強度の山の位置に電子ビームがある時,モニタ後方に置いたγ線検出器で測定されるコンプトン信号量は多くなり,谷の位置では少なくなる. ビーム位置に応じたコンプトン信号量の変調から,ビームサイズを算出することが可能である |
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このようなビームサイズ測定方式は新竹積氏によって提唱され,米SLACのFFTB (Final Focus Test Beam) 実験では波長1064nmのレーザーを用いてビームサイズ65nmの測定に成功した. 新竹氏の研究からの変更は,
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![]() 新竹モニタで利用しているレーザー |
現状と展望 |
2010年5月のビーム試験では、新竹モニタのビームサイズ測定結果をビームチューニングにフィードバックして、ビームのサイズを徐々に絞る試みがなされた。 このときのビームサイズの理論値は100 nmであり、このサイズを目指してビームチューニングを行った。 ビームサイズを下げていく過程で、このランで最終的に達成されたビームサイズは 310 ± 30 (stat.) −10 −70 (sys.) nmである。 ここで(stat.) は統計誤差を、(sys.) は系統誤差を表す。 |
![]() 300 nmのビームサイズ測定に成功したときのスキャン図 |
このランにより新竹モニタのビームサイズ測定性能が実証され、ビームチューニングデバイスとしての利用を開始した。 それと並行して、現在バックグラウンド (BG) を減らすハードウェアアップグレードを行っている。 これは収束点でのビームサイズがより小さくなるにつれ、逆にサイズが大きくなる場所が出てきてしまい、その位置でビームとビームパイプの散乱が生じてBGが増大するためである。 したがってBGに対するアップグレードはより小さいビームサイズの測定にとって重要である。 他方今後ビームサイズが小さくなるにつれて無視できなくなってくる系統誤差要因に対する評価を進め、新竹氏の研究では考慮されなかったレーザーの偏光状態が、測定精度に影響してくることを見つけた。 それを受けて新たに偏光制御システムを考案し、今年度インストール予定である。 今年度はこれらアップグレードによりATF2の目標である37 nmのビームサイズ達成を目指す。 |
![]() 光学定番はビームラインに垂直に立てられている |
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ATF2仮想衝突点ビームサイズモニタ(新竹モニタ)の開発研究