パネルディスカッション議事記録 (録音を元に編集してあります) - 各講演に関連する補足質問 - 村山:まず、各講演を聞いて質問しきれなかったことがあれば質問・コメントを。 村山:例えば、、、g-2を一生懸命測っても理論のエラーでリミットされているから意味 がないのではないか?とか。 齊藤:これから出てくるe+e-のデータ(VEPP-2000、あるいはBelle2)によって理論のエ ラーはあと半分くらいにはなると期待される。J-PARCの実験ではそのさらに半分の精度 で測定することを目指している。 村山:最近のLHCのデータを見ているとSUSYは1TeVくらいまでなさそうだからILCのリー チにないのではないか?とか。 山下:LHCでのリーチはカラーを持った重い粒子の質量のこと。カラーを持たない粒子は 持つ物に比べてかなり軽いのが一般的。100GeVでも制限されていない。ただ、ここ数年 ではLHCでカラーを持つものには1TeVあるいはそれ以上まで行けること、ヒッグスも標準 理論的なものであれば1TeVくらいまで質量域に応じて3σ以上でのindicationあるいは5 σでの発見ができることは確実だ。 久野:ミューオンコライダーの状況は? 山下:ソースの部分でのクーリング(ミューオンビームのエミッタンスを小さくする 所)が一番重要。その技術次第でまだできるかどうかわからない。コライダーにするに は非常にエミッタンスが小さくなければならない。ただ、その前段階でたとえばニュー トリノスーパービームを作るような方向にはある程度エミッタンスが大きくてもよいの で行けるかもしれない。 森:ちなみに、ミューオンコライダーは(将来計画小委からの)提言には書いていな い。他にも提言に書いていないプロジェクトもある。それらは敢えて書いていない。ま た書かれているプロジェクトについてもそれぞれ表現が微妙に違っていて、強弱をつけ てある。その辺りも含めて質問があれば知らせてほしい。 - プロジェクトのプライオリティづけについて - 村山:委員会が勉強をしてきてそれぞれおもしろいプロジェクトがあることはわかった が、いったいどれがおもしろいのか、まじめにプライオリティを考えたのか、もしかし てプライオリティをつけながら隠しているのではないか、疑問に思う方もいるかもしれ ない。そのあたりのコメントを委員長から。 森:委員個人のプライオリティはそれぞれあると思うが、客観的なプライオリティはど のような発見があるかによって変わってくる。その意味で公式見解を言えばプライオリ ティづけはしていない。 ただ、提言にあるように、5つのカテゴリそれぞれの中で、どういう発見があればどのよ うなプライオリティが考えられるかについては示されているとおり。違うカテゴリ間で のプライオリティは発見次第。 村山:他、公式見解以外にも。。。 山下:森委員長の言うこともわかるが、そうも言っていられない事態も考えられる。 LHCが結果を出すことは間違いなく、その時にはかなりな決断が必要になる。また、今日 の講演の中でも測られていないから測るべきというものと、測るとこれが決められると いうものがミックスされている。そのあたりを頭の中で整理して考えて欲しい。 法則を明確に決めながら進めていくスタンスでは巨大なものが必要になるだろうし、広 角的に測っていくには多彩なものが必要になる。それらをいかに両立していくか。 村山:委員会の立場としては「現在の状況は情報が足りなくてプライオリティはつけら れない。だから、これから(情報が出てきた時に)考えていくメカニズムを作るべ き。」である。一方で「いや、プライオリティははっきりしている。今、これを押すべ きだ。」という意見があれば聞かせて欲しい。 例えば、T2Kがtheta13を見つけたのだからHyperKなどに全力投球すべきだという意見の 方もいるかもしれないし。。。そういう強い意見はないか? 会場(?):例えばヒッグスがどこで見つかるかとニュートリノのミキシングを測るこ とは当面直接には関係ないことに思える。そう考えると、今優先順位をつけられる部分 もあるのではないか? 小林:(カテゴリ間では分けて考えられるのでは、という指摘だとして)T2Kで兆候が見 えているということで個人的にはすぐにでも進めたいが、物理以外の絡みが出てくる。 森:面白いプロジェクトは世界中にやりたい人がいる。日本のコミュニティだけ考える と予算とマンパワーには“ユニタリティ条件”があって、どこにどれだけ日本がリード してやるべきかは議論の余地がある。物理の観点ではLHC如何に関わらずやるべきであっ ても、それを日本がやるのか、例えばFNALのプロジェクトにある程度乗ってやるのかの 判断は別にある。 - 常設委員会に関連して - 大西:プロジェクトのプライオリティづけはやはり物理を中心に考えるというスタンス だが、ではどういうメカニズムで決まるのか、誰が物理を判断するのか、という疑問が 常々あるが、それについてはどう考えていけばよいか。 村山:それは次に用意していた話題と関係してくるが、、、提言では常設委員会を提案 しているが、具体的にはどうするのか?森委員長から一言。 森:常設委員会は高エネルギー委員会で適宜設置してもらえればよい。若手中心であら ゆる分野をカバーできるメンバー構成を考える。但し、それぞれの立場からはできるだ け離れ、広い立場で議論する。今後発見があると背景の状況が変わってくる中で、その 人たちが決めていく。物理のアウトプットが大きいものを選んでいく。日本と世界の状 況の比較、日本でやるべきとか、外国でやって日本はサポートした方がよいとか、議論 していく。その時にできるだけいろいろな分野の知恵をもって議論してほしい。 羽澄:ここで重要なことは“こういう発見があって、こう進むから、こういうサイエン スを重視する”というきちんとした軸を作ることである。その中で不可避的に feasibilityや諸外国の情勢、予算、マンパワーなどの議論が入ってくるであろうが、一 番大事なサイエンスの部分を若手を中心にやっていくことが必要。発見のポテンシャル が高まっている現在、今答えをだすのではなく、発見があった時にタイムリーに行なっ ていく、という主旨である。 山下:違う面はある。もちろん物理の議論を尽くせばよいが、実現可能性という時に何 が重要になるかというと、税金でやるものだから税金投入しても当然だろうと周りから 認められるものでなければ大きなものはできないだろうし、学術会議とか大型プロジェ クトのプロセスとか国の科学技術政策決定機関とか、そのような場に反映させていかな いといけない。そのためには相当熟成された組織立ったプロジェクトでないとできな い。物理だけからでは例えばエネルギーフロンティアの加速器をたくさん作ればいろい ろなものがどんどんわかってくることは自明と思えるが、できない現実がある。こうい う委員会は必要だがあるところに限界があって、例えばアメリカでDOEといっしょに議論 しているHEPAPのように、いろいろなセクタの人といっしょに議論する場所を持ち、いっ しょに決めていくというようなプロセスがもう一つ上に必要なのではないか。 村山:具体的には?文科省とか財務省とか政治家とかといっしょにやる委員会を作る? 山下:具体的にはないが、HEPAPは一つのモデルだと思う。ただしHEPAPにも問題点があ ると聞いているが。こういう(研究者側が)悩んでいる姿をわかっていてもらう、臨機 応変にこういうことが来たらこうだとわかっていてもらうのは必要。 森:それは必要だとは思うが、最初はfeasibilityを考慮しつつも物理の議論でまずプラ イオリティをつけることが必要。 山下:物理の議論での重要性は物理を真剣に考えれば自動的にできるだろう。 後田:feasibilityや予算の話をするのは当然のことで、それは高エネルギー委員会で やっていることだと思う。だが、そればかり考えて物理の視点を忘れないように、若い 人たちを取り入れた将来計画を考える場を提案している。ただ決定はそこだけでできる わけではないのは明らか。 村山:それは“50を過ぎると物理を忘れる”という爆弾発言では。。。 井上:自分がやりたいと思える物理、プロジェクトと、学生たちが興味を持てる物理、 ということを判定基準に盛り込みたいと思う。 - フロアからの意見と議論 - 山本:今日出席して最も感じたことは、これはタウンミーティングになっているか? だ。学会のシンポジウムで中堅、シニアになっていく方々が明日の自分たちはどうした らよいかを議論しているようだ。もう一つは、過去の小委員会(長島委員会、駒宮委員 会)では10年後20年後の将来をどうするかを真剣に議論して方向性を出してきたと思う が、そのようなことを早急にやらなくてはならないという意見を今日は聞けなかった。 それぞれ自分が持っている計画をいかにきちんとやらなくてはならないかをまとめて話 しただけ。これまで2年費やして、そして今また結果(発見)を見ないとわからないとい うのは時代の流れを見なければわかりませんということを言っていて、小委員会として 将来計画をやっていくことの役割はなかなか果たせないと思う。高エネルギーの計画は 一計画10年でもできないくらいになっていて、明日のことだけをやっていては間に合わ ないからどうしようということで議論しているはず。結果を見てから10年後20年後を話 すと言う間におそらく5年たつ。そういうやり方を将来を担う中堅、若手が集まってやっ ていては結果がでないと思う。過去の小委員会の時に対して例えば時代が変わったので 同じやり方はできないというならそのようにはっきり示して欲しい。その上でないと、 こういった形の議論を2年後3年後まで引っ張って結果的に世の中に流された結論しか出 てこないことになる。 駒宮:予算エージェンシーといっしょのグループを作って話せばよいとあったが、それ よりも、そういう人たちが我々に何を聞くかというと、分野として一本化しているか、 である。中がまとまっていないとできない。まずはここできちんとした議論しないとい けない。駒宮小委員会の時に物理で大事だと考えたことはヒッグスと超対称性であっ た。それが発見されようとする時期であるので、そこに焦点をあてて俯瞰して幹の部分 を作っていくという構造でないと将来計画はうまくいかない。もちろん他のものも重要 だが、やはりヒッグスと超対称性を中心にしていくべき。 鈴木機構長:3点お願いしたい。一つめはできるだけ多様な分野をキープする。二つめは 素人のサッカーのようにボールのある方(何かがある方)にあっちこっち行くのではな く、いろいろなところの目を養わなければならない。世界があっちに行っても日本では こうという基盤をつくらないといけない。アメリカは何かあってやめると完全にやめて きて、人も散るし若い人も育たない。日本のよい点の一つは校費のおかげもあっていろ いろな芽が残っている。それは外国からもうらやましがられる点。三つめは駒宮さんの 指摘のとおり、文科省なりは何かある時には雰囲気はどうかと聞いてくる。高エネル ギーコミュニティがしっかり育っていないといけない。大事なことは5年計画で何があ り、10年計画として何があり、そして30年、50年を見た時に何があるか、先につながっ ているプロジェクトをきちんと示すことだ。 小松原:今決定を決められないからメカニズムを作りたいということで常設委員会の提 案につながっていると理解しているが、何か起こるのを待って定期的に集まる委員会と いうのは何か変な気がする。事がおこるまでは何か準備しているとか勉強しているとか という感じになるのか? 森:今日の講演を見て山本さんのような印象を持たれる方がおられるというのはわか る。だからと言って、委員会の中で厳しい議論をしていないわけではない。今回は小委 員会の準備不足もあってそれぞれの分野の専門家がそれぞれの将来計画を話す形にな り、どうしてもどれもやるべきという話になりがちな面があった。(他カテゴリの委員 が紹介する形にできたらよかった。) 森:方針についてははっきりしていると思っている。提言ではそれぞれのカテゴリで5〜 6行に簡潔にまとめている。我々の知っている限りのことでは先は見えている。タイムス ケールもだいたいわかっている。それぞれの物理が重要なことはわかっている。駒宮さ んの言われたとおり、ヒッグスや超対称性というTeV領域の物理の重要性は認識してい る。ただ、LHCなどで結果が出ようとしている段階でこれをやるべきだと示して意味があ るかわからない。小委員会としては結果を見ながら判断していくべきだと考える。常設 委員会を作るという提案をしているが、実は今夏にすごい発見が起こることもありう る。その場合には常設委員会を待たず、この小委員会の答申自身ではっきりとした意見 を書くことになる可能性もある。 山下:補足すると、夏のタイミングで出るとするとJ-PARCが止まっている今はLHCとMEG である。それはTeVスケールの超対称性とヒッグスである。コライダーについてのタウン ミーティングを9月10日に企画しているが、それは結果が期待される直後で、かつ、秋の 物理学会の前になっている。シビアな議論が起こるような可能性も期待される。 村山:駒宮さんの意見は、プライオリティははっきりしていてそれを軸に計画を作るべ きなのではないか、という指摘だと思うが、それについて。。。 森:軸と言っても1年後(発見の後)には変わっているかもしれない。現在の軸はあるに しても、1年後2年後にどうかについてはもう少し見ながら議論した方がよいのではない かというのが現状だと思う。 幅:過去の将来計画を見た時の印象もどちらかというと今と同じだった。既に議論され ている計画が並べられ、どれかに本当の意味で決断が下されたというより整理して提示 されたという印象であった。今回変わっているとすると、当時エネルギーフロンティア は山の向こうを見るというイラストで象徴されている段階だったが、今は本当に答えが 出てくる段階となっている。今回同じように進まないのは仕方がない。 山下:正直に言えばびびっている。もうすぐLHCから大きな方向が見えてくる。それに応 じていつか誰かが決断をしないといけないが、それは結構近い。 山本:そういうことをタウンミーティングの中できちんと言ってほしい。 幅:20年前に“beyond the standard model”が一番大事だと言うことはできたと思う が、今、同じような言い方では無理。小委員会でそこまで言うのは酷だと思う。 森:小委員会はここまでに時間がかかったと思われている方もいると思うが、LHCが遅れ ていったこともあり、もっと時間をかけて議論すべきではないかという雰囲気がずっと あって、これまで来た。 井上:境界領域(地下、宇宙)では一本化せよと言われるとあまり面白くない。人材交 流はあると言っても加速器と非加速器でそれほどでもなく、宇宙ではやっと入り始めた ところ。機構長の話に多様にして欲しいというコメントがあったので少し安心した。一 つにまとめるとなっても応援はするが全部のめり込むという形にはできないという話は 小委員会の中でもしてきた。 駒宮:すべてまとめよという意味ではなく、筋を一本通すべきという意見である。もち ろんニュートリノが大事なことも知っているし、宇宙の意義も知っている。ただ、高エ ネルギー物理として一本筋を通し、他にもdiversityとしていろいろなものがあるという 形。多様なものも重要なことはわかる。一極化した場合、それがつぶれたら全体がつぶ れる。 井上:小委員会のメンバーを考えるともう少し広いコミュニティに広げようという意図 が見えるわけだが、高エネルギーにとっての柱と他の柱は一致していない可能性があ る。例えば地下カテゴリからILCを押すように言うようには必ずしもならない。互いにリ スペクトしていることはわかるが、他のコミュニティを巻き込む意図があるならばもう 少しリスペクトの度合いを上げる必要があると思う。 森:今日あったフレーバー物理や地下実験のカテゴリの話はだいたい今後10年の話であ る。小委員会のチャージは10年後以降、現LHCの次の大プロジェクトを考えるというこ と。今進んでいてサポートしている地下実験等とLHC後の話とは不整合があるわけではな い。予算とマンパワーを時間方向でも考えていかなければならない。 過去の小委員会の答申でも例えば第一回ではリニアコライダーR&DやSSCをやりなさいと 書きつつトリスタンをちゃんとやりなさいとも書いている。今のことをきちんとやりつ つ将来の準備をして10年後に立ち上げなさいということだ。今回の小委員会でも同様に 議論している。 山本:相互理解を深めるために言うと、自分も非加速器実験もやってきていて、井上さ んの気持ちはわかる。その上で敢えて言っている。20年前、10年前に出されている答申 に基づいて多くの人が10年かかる開発、20年かかる開発を真剣にやってきている。時代 が変わって見直せば実はそれがいらなくなったということはありうるが、だけど、その 流れを明確にしていく努力をしないといけない。過去のことをリセットして新しく考え るというだけでは物理も加速器もそれを支える開発をしている人たちも含めた大きな高 エネルギー一体とした流れにはならないのではないかと思ったので先ほどのような意見 を述べた。 山下:物理はLHCの結果が出てくるまではここ20年間変わっていない(LEPなどでいろい ろわかってかなり明確に方向性は見えてきたが)。今日は沢山の登壇者がいてあまりに 多岐の方向があるように錯覚するかもしれないが、物理としてはヒッグス-TeVスケール の物理(ここにはフレーバー物理も含まれる)、ニュートリノセクタ、あとは(極初 期)宇宙、に集約され、そのくらいしかなくそれほどバラエティはない。実験はバラエ ティがある。大学も育てないとならない。いろいろなアイデアを持っていないといけな い。科研費レベルでできることはどんどんやっていきましょう、でよい。問題は“大実 験”、つまり巨大加速器、加速器のアップグレード+巨大検出器、言ってみればリニア コライダーとHyperK級のもの(SuperKEKBはすでに走っている)。どうやって両立してい くか、そのような議論をすべき。他にも大切な物理はたくさんあるが、まだ方向性を見 定めている段階であるから、小規模なものは順にやっていけばよい。大規模になってき たら全体で議論する。もう一つ言うと、それを2.5シグマで議論をするのは間違っている と思うが、それが育った時の準備はきちんとしておくべき。 生出:プロジェクトとしてなすためにはどうしても予算と人員が重要。加速器のような 裾野でどのくらいの人数がいるのかの概算なしでは空想でしかない。SuperKEKBはすでに 通ったからいいという話があったが、通ってからが大変。J-PARCも同じだが、予算だけ でなく、建設し、性能を出すために膨大な努力をしている。実現するかどうかは別とし て評価はできると思うので、そのあたりをチャートにするなどして示してもらいたい。 森:実は予算とマンパワーのチャートは作って持っている。公開していない。理由はプ ロジェクトごとに精度がまったく違う状況でしかないので、出した時のインパクトを考 えると公開できない。委員会の中では議論している。運転経費、マンパワーも含めて。 相原:LHCの結果が出てくればILCをどうするかということは避けられない。リニアコラ イダーがトップ・プライオリティだとしてきたことは事実で、これまでの二度の答申に 書かれ、それだけは実現していない。J-PARCのアップグレードは現状のトップ・プライ オリティになっている。次の10年間をだいたいどうやるかはわかっている。SuperKEKB、 次はJ-PARCのアップグレードをやると自動的になっているし、ニュートリノのどの大型 検出器を選ぶかなどの話もだんだん出てくる。ただ、ものすごいリソースを20年以上リ ニアコライダーR&Dに費やしてきたことは事実。それが次の10年くらいで簡単にできると 考えられていないこともまた事実。どこかでその議論をしないといけない。日本はエネ ルギーフロンティアに対してどうするのか。関係するのはLHCのアップグレード。あれも やり、リニアコライダーR&Dも同じようにやるのかという議論は必ずある。もちろん何が 発見されるか、どういうマシンが欲しいかによることもわかるが、その辺りの議論を避 けては通れない。今回はあえてその辺りに踏み込まなかったのかもしれないが、それを 不満だに思われるのは理解できる。エネルギーフロンティアをずっと押してきたので、 それへの関わり方をきちんと言わないとならないと思う。 森:エネルギーフロンティアについては提言にはっきり書いてある。“LHCで1TeVまでに ヒッグスなどの新粒子の存在が確認されたらILCをやるべし”、“そうでない場合はLHC アップグレード…”と書いてある。ただ、電子のコライダーはどうしてもいずれ必要。 ILCが届かなければ次の方法を考えるしかなく、そのためのR&Dは続けて、早く実現させ なさい、と示している。 山内:少し不満なことは2年間小委員会で苦労してきただろうが、その様子が見えない。 先ほどのチャートの話にしろ、ILCとLHCアップグレードの間の話もあったと思うが、も う少しその辺りを出して議論を巻き起こしてもらいたかった。 山下:LHCアップグレードとILCはどちらを選ぶという話ではないように思う。それより むしろ、10年後より前に、SuperKEKB+J-PARCフルパワーというのは(この分野の総予算 や総人財を固定して考えてしまえば)すでに大議論が必要になる状況。そのような中でさ らに決断をしなければいけない。本来はそれがまず一歩目の方向性を決めるものでもあ り、そのあたりから着実に進めていかなければならない。そのような中で小委員会とし ては今の段階で議論のもととして提言を示したという形。難しいところを感じてもらえ れば幸い。 山内:そのあたりはわかる。が、何が判断するポイントかという議論があったと思うの で、そういうところをコミュニティに対して言ってもらえれば、と思う。 - 常設委員会に関する具体的アクション - 村山:これまでの小委員会での議論を踏まえ、“これから何が重要になってくるか、近 々判断できる可能性が高くなってきているので、それに迅速に対応できるような常設の 委員会で議論を深めていく”と提案している。タイミングが来るまでは常にそれぞれの カテゴリでロードマップを作って持っていて、それをすりあわせ、リファインしなが ら、本当に決断すべき時にそれに基づいて行動するということなわけだが、具体的にど うすればよいかについてまでは提言では踏み込んでいないので、それについても意見を 聞きたい。 森:基本的には高エネルギー委員会でやってもらうことなので踏み込んでいないが、例 としては高エネルギー委員会を母体として、それをもっと広い分野で若手を入れてあら ゆる分野をカバーできるようにしてもらえばよいと考えている。実際はここでの議論や 高エネルギー委員会での議論を踏まえて決めてもらえばよい。 相原:高エネルギー委員会+小委員会で拡大高エネルギー委員会=常設の委員会、とい うような形が望ましいのだろうと思う。今回は高エネルギー委員の任期と小委員会の任 期がずれたためもあって若干連絡がよくなかったこともあり、次は新しく選ばれる委員 +常設委員会としてリセットする。但し、ここ1ヶ月2ヶ月で決断をする場合は現小委員 会だろう。仕組みとしては高エネルギー委員会+枠を広げた拡大高エネルギー委員会( 20人くらいいてもいいと思う)が常に将来計画だけを議論するということで、次の高エ ネルギー委員会に申し送りをする。 - 若手をひきつけるためには? - 村山:小委員会として、高エネルギーで若手をひきつけるためには何が必要で、提言・ 答申には何を盛り込むべきか、どのように人材育成につながるか、フロアから意見を聞 きたい。 森:加速器や測定器の開発に必要な人材や予算は非常に大きなテーマだが今回はまった く触れていないので、意見があれば是非。 幅:これからカテゴリごとのタウンミーティングをやっていくという話の中に人材育成 の話も計画としてはあるということだったが、近いうちにこのテーマについても実現し てほしい。 相原:一つお願いしたいのは、このコミュニティはまじめで自虐的に問題点をさらけ出 すのだが、まずはうまく行っていることを前面に押し出した方がよい。そうでないと若 い人は来ない。実際、ほとんどのものはうまく行って手に入れているわけだから。 駒宮:ひきつけるのは何か新発見だと思う。ニュートリノ質量、BセクタでのCPの破れ、 theta13があったとか、ヒッグスが見つかったとか、そういう大きな発見だと思う。自分 もJ/ψの発見で入った。 鈴木機構長:だいたいそういうものでひきつけられるのは東大の学生だけ。。。(笑) 一番大事なことは先生がアイデアを持つこと。 村山:どなたか20代、30代の方にも話してほしい。 会場の若い人:もともと興味を持ってはいるので、研究室の雰囲気だとかそういうもの でいいのでは。。。 田島:提言の中でいろいろ面白いことがあると挙げられているが、大事な測定と魅力的 な実験というのは多少違うと思う。若手や学生がひきつけられるのはこれまでにない大 発見とか。この測定を精密におこなうことは重要であるというのとは切り分けて、そぎ 落として書かれているとわかりやすいと思う。 飯嶋:みんなで話さなければならないことと個人個人で興味を持つことは違っていて、 もう少しみんなでやるべきことにしぼって議論した方がよい、ということか。 田島:プロジェクトの大きさは関係ない。“こういう測定は大切だからやるべき”では ひきつけられないと思う。なぜ大切かから、わかりやすい説明というか。。。 羽澄:驚きがある? 田島:そういう感じ。 山下:素人受けする、新聞ネタになりそうなものに飛びつくという傾向もある。物理を 進めるには本当にどういう方向が重要か、専門家としての知見が問われる。小委員会と しては、どういう測定が重要かということを皆にわかってもらうことが大切。 - おわりに - 村山:予定の1時間ほど議論をしたが、最後に委員長の方から。 森:あくまでここで結論を出そうとしているのではなく、これがスタート。今後何度か タウンミーティングも開くし、委員会も月1回くらいで開いて議論していくので、小委員 会委員にインプット、意見を。 これまでの活動はウェブページ http://www.icepp.s.u-tokyo.ac.jp/hecsubc/ にまとめてあるのでチェックしてほしい。