A02班進行状況報告

アトラス検出器を用いた超対称性の発見

1. 超対称性粒子発見のデータ解析のための準備研究

(a) 超対称性粒子発見のために考慮すべき重要なバックグラウンド過程について、行列要素の計算でマルチジェットを生成するイベント生成プログラムを用いて、より現実的なバックグラウンドの新しい評価を行っている。この評価により、従来有望とされていた(0-lepton)+(n-jet)チャンネルでの超対称性発見はかなり困難であるが、(1-lepton)+(n-jet)チャンネルは依然として大きな発見能力があることがわかった。

(b) 超対称性発見のために重要となる横方向運動量欠損の測定、レプトンの同定、ジェットエネルギーの較正などのアルゴリズムを評価し直し、改良を行っている。

(c) 高速測定器シミュレーションを用いて、SUSY粒子の新しい質量再構成法やスピンの決定法などの検討を行った。

(d) 神戸大と東京大学・高エネルギー加速器研究機構を結んでGRIDコンピューティングによるデータ解析を行うためのシステムを構築した。

2. ミューオントリガーチェンバー(TGC)の組み込みとソフトウェア開発

平成19年度の実験開始にむけて、前後方ミューオントリガーチェンバー(TGC)のアトラス検出器への組み込みを行っている。

(a)日本グループは約500台のTGCをKEKで製作し、製作されたTGCの検査を神戸大学で行った。神戸大での主な検査項目は、(1)TGCの気密性検査、(2)TGCの高圧印加テスト、及び(3)宇宙線を用いた検出効率測定である。2005年7月までに全てのTGCの検査を終了した。

(b) これまでに製作完了したTGC約500台をすべて実験現場(CERN:スイス・ジュネーブ)へ輸送した。輸送されたTGCをCERNで受け取り、輸送時の損傷がないことを確認した。

(c) 現在、CERNで1/12 Sectorと呼ばれるフレームの製作を行っている(写真参照)。このフレームにTGC及び測定回路を組み込み、動作を確認する作業を続けている。日本グループは、組み込み直前のTGCの検査・部品の取りつけ作業、測定回路の検査システムの構築を行っている。2006年3月末までにM1ステーション用セクター12台が完成した。

(d) TGCトリガシステムの詳細な性能評価をシミュレーションによって行っている。コインシデンス・ウィンドウを決定するとともに、トリガー効率、トリガーレートの推定を行なった。


本ページに関する問い合わせ先:東大素粒子センター・坂本 宏sakamoto@icepp.s.u-tokyo.ac.jp

2006年6月23日更新