細分化したタイミングカウンターでビーム試験

陽電子スペクトロメータは、COBRA超伝導電磁石をそのまま利用しつつ、測定器はすべて一新しました。陽電子が飛来した時間を正確に測るタイミングカウンターは、これまでの太いシンチレータから、薄いシンチレータ板とシリコンセンサーからなる小型の検出器を何百も並べたデザインとしました。陽電子は平均して9個の小型検出器を通過するため、時間測定が9回行われ、合わせておよそ30ピコ秒の時間精度が得られます。また、これで陽電子のおおよその軌跡がわかるため、事象と関係のない偶発ヒットを取り除いて精度を上げることも可能となります。

2015年のMEG IIミューオンビームを用いたパイロットラン実施時に、全体の1/4にあたる128個のカウンターをインストール ©MEG Collaboration
ミュー粒子ビームを使う試験に向けてCOBRA電磁石内にタイミングカウンターを設置したところ ©MEG Collaboration

精度の高い時間測定は、大量のバックグラウンドの中から陽電子とガンマ線の同時事象の信号を見つけ出すために極めて重要です。MEG II実験のタイミングカウンターは、ミュー粒子静止ターゲットの上流と下流それぞれに256個の小型検出器を配置した構造となっています。この測定器は、2000年代後半より実用化が進んだシリコン光センサー(SiPM)を活用することで可能となりました。

タイミングカウンターを製作する大学院生 ©MEG Collaboration
ビーム試験前のタイミングカウンターの点検作業(後方で液体キセノン測定器の作業も行なわれている) ©MEG Collaboration