2.7トン液体キセノンガンマ線測定器

優れた分解能を持つガンマ線測定器としては、対生成スペクトロメータ、結晶シンチレータの2タイプが一般的ですが、MEG実験では液体キセノンを使ったこれまでにないガンマ線測定器を開発しました。液体キセノンは、高いガンマ線検出効率を持ち、さらに結晶と違って不純物を徹底的に除去できるため、非常に優れた性能の測定器を作ることができます。このため、浜松ホトニクスと共同研究し、液体キセノン中に浸して使える真空紫外光に感度のある光電子増倍管を開発しました。

測定器のデザイン
MEG実験では900リットルの液体キセノンの有効体積全体を846個の光電子増倍管で取り囲み、その直接光を捕らえるデザインとしました。この構造がスーパーカミオカンデ実験に似ていることから「ミニ・カミオカンデ」とも呼ばれました。

半円形型の液体キセノン測定器の真空断熱容器(クライオスタット)が2006年6月にPSIに到着、ビームラインに設置 ©MEG Collaboration

光電子増倍管
液体キセノン用の光電子増倍管は、浜松ホトニクスとともに初期の小型プロトタイプから数えて3度にわたる開発を繰り返しました。液体に浸すため体積の小さい構造を採用し、低温で動作して真空紫外光に感度があります。現在では、ダークマター探索実験等に使われる標準的な技術となっています。

液体キセノンガンマ線測定器の内部に敷き詰められた光電子増倍管 ©MEG Collaboration

パルス管冷凍機
キセノンはマイナス108~111度の間でしか液体の状態を保つことができません。そのため高精度な温度管理が重要になります。そこで、KEK低温グループの春山教授を中心として、キセノン温度に最適化したパルス管冷凍機の開発を行ないました。課題は、光電子増倍管が発生する熱に十分対応できるかということでした。開発は成功し、MEG実験の実施中、5年以上に渡って安定して液体キセノン測定器を稼働することができました。これらの成果により2005年4月に、春山教授、三原助教(当時)らは文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)を受賞しました。

同軸(蓄冷機内側方式)高冷凍能力パルス管冷凍機 ©MEG Collaboration