PSIに実験プロポーザルを提出、直ちに承認

1999年に東京大学と高エネルギー加速器研究機構(KEK)、早稲田大学、名古屋大学の研究グループは、ロシアの研究者とともにPSIに実験プロポーザルを提出し、PSIの国際研究委員会により直ちに承認されました。承認直後にスイスの研究者が加わり、その後イタリアの研究グループ、さらにアメリカの研究グループも参加して、実験の準備が続けられました。2002年にMEG(Mu-E-Gamma「μ→eγ」)と名付けられたこの国際共同コラボレーションは、実験開始時には60~70人のチームとなりました。

PSIでの初期のミュー粒子ビームの輸送実験に参加した研究者たち ©MEG Collaboration
MEG実験プロポーザル表紙 ©MEG Collaboration

実験採択後MEG実験の国際評価委員会が設置され、その後年2回実験の進捗状況の評価が行なわれてきました。プロポーザル提出前より、日本グループは液体キセノン測定器の小型プロトタイプを製作し、測定器原理の検証を続けました。このプロトタイプは有感領域体積2.3リットルで、周囲に配置した32本の光電子増倍管によりシンチレーション光を捉えるもので、キセノンの液化には液体窒素を使用しました。

小型プロトタイプ設計図 ©MEG Collaboration
2.3リットルの液体キセノンに浸される32本の光電子増倍管 ©MEG Collaboration

その後製作した大型プロトタイプは、直方体のホルダーに装着された228本の光電子増倍管と真空断熱層を備えたクライオスタットから構成され、有感領域体積は70リットル、運転には120リットルの液体キセノンが使用されました。キセノンの液化・再凝縮のためにパルス管冷凍機をKEKで新しく独自開発しました。大型プロトタイプを使った開発研究により、液体キセノン測定器の実機建設に必要なすべての基礎技術が確立されました。

大型プロトタイプの設計図 ©MEG Collaboration
真空断熱層を備えたクライオスタットに光電子増倍管を組み込む研究者 ©MEG Collaboration
KEKのカウンターホールで大型プロトタイプの作業を行う大学院生 ©MEG Collaboration