計画研究B02「テラスケール物理がもたらす新しい時空像」

我々の時空は4次元か、或は、5次元目、6次元目がある高次元時空なのか。この基本問題にLHCで探索されるテラスケール物理を通して迫る。余剰次元があるとすれば、その大きさは小さい。余剰次元を観るにはエネルギーをあげて探索するしかない。驚くべきことに、標準理論で必要とされているヒッグスボゾンや数多の宇宙・天文観測からその存在が疑えない暗黒物質の正体を解く鍵が余剰次元にあるかもしれない。余剰次元の存在は時空像、重力構造の変革を意味する。余剰次元の直接検証は、Kaluza-Klein 励起モードの生成と崩壊、TeV ブラックホールの生成・蒸発の観測でなされる。

新しい時空像を探り当てるのに、我々は二つのアプローチをとる。一つは、ゲージ・ヒッグス統合理論を典型とするように、既知のゲージ結合や世代混合、質量スペクトル、CP の破れや電弱精密測定を再現すべく、ヒッグスボゾンを統合するモデルを構築することによって余剰次元構造を明らかにし、その実験的帰結を導く。(細谷、林)もう一つは、余剰次元の存在を仮定し、Kaluza-Klein 励起モードやブラックホールの存在をいかにLHC などの加速器で見極めるかを明らかにする。(細谷、尾田)新しい時空像の背後に潜むさらに大きな理論的課題、整合性のある高次元量子場理論、時空の量子論の構築をも目指す。(細谷、林、尾田)超弦理論と実験との橋渡しにもなろう。

研究組織

研究代表者 細谷 裕 大阪大 理学研究科 教授 総括、余剰次元
研究分担者 林 青司 神戸大 理学研究科 教授 高次元統合理論
連携研究者 尾田欣哉 大阪大 理学研究科 助教 ブラックホールと余剰次元

(研究者、大学院生あわせて8名)