宇宙論は近年著しい発展を遂げた分野であるが、宇宙の最初期については未だに良く分かっていない。例えば、暗黒物質の正体やその生成過程や宇宙のバリオン数生成の過程は明らかになっていない。これらの謎を明らかにするには素粒子の標準理論を超えた新しい物理のパラダイムが不可欠である。本研究の目的の一つは、LHC実験で得られるテラスケールの知見を生かし、暗黒物質の正体や生成過程およびバリオン数生成を説明する研究を進め、これらの謎に迫ることである。
一方、素粒子の標準理論を超える物理は、宇宙論的な観測により多くの制限を受ける。超対称理論におけるグラビティーノに対する元素合成からの制限がその典型である。本研究では、こうした宇宙論的制限の精緻化を更に進めるとともに、広範な素粒子模型についてその成果を適用しこれまでよりも精密な宇宙論的制限を導き出す。これらは新たな物理のパラダイム構築に際し、高エネルギーフロンティア実験からの知見と相補的役割を果たすと期待される。
更にテラスケール物理の進展は宇宙の最初期の現象であるインフレーション期の物理の理解に大きな寄与をもたらす。この観点から本研究ではインフレーションに関してLHCで得られた新たな知見を反映しながら、より精密な研究を進める。
これらの研究により、標準理論を超える新たな素粒子物理学像を明らかにするとともに、新たな初期宇宙像を構築していく。
研究代表者 | 山口昌弘 | 東北大 | 理学研究科 | 教授 | 研究の総括,素粒子の模型構築と宇宙論への影響 |
研究分担者 | 諸井健夫 | 東京大 | 理学系研究科 | 教授 | 標準模型を超える物理が初期宇宙論に与える影響の解析 |
連携研究者 | 高橋史宜 | 東京大 | 数物連携機構 | 助教 | 標準模型を超える物理とインフレーション |
(研究者,大学院生あわせて9名程度)