内山雄祐氏が2010年度高エネルギー物理学奨励賞および第5回日本物理学会若手奨励賞を受賞

東京大学素粒子物理国際研究センター特任研究員 内山雄祐氏が、2010年度高エネルギー物理学奨励賞および、 第5回(2011年)日本物理学会若手奨励賞(素粒子実験領域)を受賞しました。


受賞題目
"Analysis of the First MEG Physics Data to Search for the Decay μ+ → e+γ"
「MEG最初の物理データによるμ+ → e+γ崩壊探索の解析」

研究内容

μ → eγ崩壊
  現在の素粒子物理標準理論では荷電レプトンのフレーバは保存するとされているため、ミュー粒子がガンマ線を掃出し電子に転換する反応(μ → eγ崩壊)は禁止されています。しかし、標準理論を超えた新しい物理が存在すると、レプトンフレーバはもはや保存されず、実験で検証できるほどの高い頻度でμ → eγ崩壊が起こることが予言されています。 東京大学素粒子物理国際研究センターではμ → eγ崩壊を今までにない高い感度で探索し、超対称大統一理論の実験的検証やニュートリノ質量の謎に迫る、国際共同実験 MEG を主導的に推し進めてきました。 MEG実験は2008年から本格的な物理データ収集を開始し、現在世界最高感度での探索を行っています。
  内山氏は本学大学院学生時代にMEG実験の立ち上げに尽力し、実験開始に大きく貢献してきました。 受賞対象論文、は2008年度に取得されたMEG実験の最初のデータを即座に解析し、μ → eγ探索をおこなったものです。 検出器の較正手法や解析方法を確立し、当時の上限値に迫る感度での探索を実現させました。 とくに、実験立ち上げ時に特有の検出器の不具合や予期せぬ現象を一つ一つ理解し対処をおこなっており、以後の未踏領域の探索への礎となっています。

MEG実験概説図 検出器製作中の内山研究員


高エネルギー物理学奨励賞選考委員会における受賞理由は以下の通りです。
 「この論文はPSIで実施されているMEG実験の最初の物理データー(2008年取得)を解析したものである。 得られた結果は、これまでのリミットに迫るものである。 物理の目的、実験方法、測定器の較正、解析手法などを深く理解して、それらを詳しく的確に記述している。 論文の体裁としては、全体の構成がきちんとしていて判り易く、英文も読み易く、参考文献の上げ方も適切であり、 MEG実験での将来の展望もきちんと纏められている。論文の完成度は高い。長期間にわたる実験への集中力が、 ドリフトチェンバーの放電の多発によって当初ランの感度を大きく損なうことになった中でも、 高感度な結果を出す原動力となったと推測される。目的の深い理解、明確な目標設定の大切さを改めて知らしめている。 以上の理由により高エネルギー物理学奨励賞候補に値すると判断した。」

原著論文

東京大学大学院理学系研究科 博士学位論文
"Analysis of the First MEG Physics Data to Search for the Decay μ+ → e+γ" (PDF(英語,16MB), 日本語要旨)

関連リンク

MEG実験日本グループHP
MEG実験HP(英語)
日本物理学会 素粒子実験領域
高エネルギー物理学研究者会議
last update 2011.9.28




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